真霊論-前世療法

前世療法

前世療法とは1980年代後半より欧米を中心に盛んになった、催眠療法の一種である。
この療法では、時間を遡っていく「退行催眠」によってクライアント(相談者・患者)は出産以前のいわゆる「前世(過去世・生)」へと誘導される。
そしてその前世における自分の状況を把握・理解することで、クライアントが「現在抱えている心の問題」の解決の糸口を見つけ出そうという療法である。
前世療法と「療法」が付いているのは、前世にアクセスするその目的が、「前世診断・占い」のように、どんな前世だったかを知るための興味本位のものではなく、あくまでも「現在の心の問題解決に活用する」ことを意味するものである。
従って、クライアントがどんな前世だったかは、この療法においては重要ではない。
むしろ、前世の何が「現世のクライアントの問題点になっているのか」を知ることが重要となる。
この療法を発見したのは、米国の精神科医、ブライアン・L・ワイス博士である。
1986年に出版された"Many Lives, Many Masters "(邦訳版1991年初版『前世療法』PHP出版)によって、欧米日本で話題となった。
ただし、「前世」そのものの存在を含む「前世療法」の有用性を、すべての精神科医が認めているわけではない。
従って欧米や日本で前世療法を実践している機関・クリニック・サロン等は、ワイス博士の考えに賛同・共感している施設ということになる。
また、ワイス博士方式の退行催眠を使わずに、何かしらの方法でクライアントの前世にアクセスし、現在抱えている問題の解決に活かすという手法を取る前世療法施設等も存在する。

ブライアン・L・ワイス博士と前世療法

1980年代、米国で退行催眠を使って患者の心理療法を行っていたブライアン・L・ワイス博士は、とある患者の特異な特徴に気づく。
それは、自分が生まれる前の時代の事に関する詳細な記憶・情報を語り始めたことだった。
やがてこうした「前世」と思われる事象を語る退行催眠患者の数は増え、ワイス博士にとって「少なくとも退行催眠という精神環境においては、前世は存在する」と考えるようになった。
また、この退行催眠中に患者がアクセスする「前世」には、現在の患者の心の治療に必要なヒントがいくつも隠されていたのである。
そこでワイス博士は、「前世が本当にあるかどうかを決めることよりも、患者の心を治療することが重要」と判断し「前世療法」を創始したのである。
患者の中には、前世ではなく「来世」にアクセスし、その情報を元に現在抱える心問題を克服したケースもあるそうである。
●プロフィール:ブライアン・L・ワイス博士
1966年コロンビア大学を優秀で卒業後、1970年エール大学医学で医学博士号をとる。
その後、ニューヨーク大学ペルビュー医療センターでインターンを修め、エール大学医学部の精神医学実習を修める。
フロリダ州のマイアミビーチにあるシナイ山医療センターの精神科部長兼マイアミ大学医学精神科の教授を務め、現在はマイアミ市に「ワイス・インスティチュート」を設立し、患者の治療を行う一方、講演、セミナー、ワークショップなどを精力的に行っている。
専門分野は、うつ病と不安症、不眠症、薬物濫用による精神障害、アルツハイマー症、脳化学等の研究及び治療である。

前世療法の実際

日本で前世療法を行っている団体・クリニック等はいくつも存在している。
それらの多くは医療施設としての精神科系クリニックではなく、民間のセラピー施設であり担当するのも民間資格を所有した「セラピスト」であることが多い。
ちなみに女優の宮崎ますみさんも「米国催眠士協会(National Guild of Hypnotists)認定インストラクター」「米国催眠療法協会(American Board of Hypnotherapy)認定インストラクター」(いずれも民間認定資格)を持つヒプノセラピスト、前世療法セラピストとして活躍中である。
これらの多くの施設ではワイス博士のノウハウに基づいた前世療法が行われる。
実際に行うことは退行催眠であるが、「誘導方法」「治療のヒントとなるポイント」などにワイス博士のノウハウが活かされているのである。
ただし、ヒプノセラピー(退行催眠療法)の米国認定証は「6万ぐらいの予算で2日の講習で取れる」とされるものである。
前世療法の実際は、まず誘導文を聞くことで心身をリラックスさせることから始まる。
その後はセラピストの誘導に従い見えてくるイメージに集中することになる。
セラピストはタイミングを見て、「次の大事な場面に移ります。5,4,3,2,1,パチン!」などとシーンを変えるように誘導する。
そしてケースバイケースで、セラピストからの質問に返答をするのがセッションの内容である。
平均的に4時間-6時間ほどの時間をかけてセッションは行われる。
セッション料金は3万~6万円くらいが相場のようである。
どんな前世のイメージ、ビジョンを見るかは人によって異なるが、何回かセッションを受けないと何もイメージできないと言う人もいて、個人差はかなりあるようである。

前世の有無について

前世療法においては、前世の実際の有無に関しての検証は行われない。
これは、前世の有無が重要なののではなく、「あくまで心理療法である」というのがその理由である。
つまりクライアントが催眠中に見た前世と思われる自分が、リアルなことかどうかは問題ではなく、「今抱えている問題が解説するかどうか」が重要なのである。
世界中の体験者の中には、「間違いなく自分の前世」と思わせる今生との因果関係・根拠を持つものもいれば、「記憶の断片の集合」と感じる体験者もいる。
従って、もし「自分の前世の正確な情報が知りたい」等、心的問題とは関係なく前世にこだわりを持つ人は、どこか他の施設等を訪ねる方が賢明かもしれない。

《さ~そ》の心霊知識