真霊論-精神世界

精神世界

精神世界とは、人間に内在する心・魂・意識などの見えざる世界(すなわち、科学が積極的に考察対象としようとしない)の探求をテーマとした概念、論説、著作物等全般を指す。
精神世界はそもそも、物質や見える世界だけを重視し、尊重してきた近代文明(および近代科学)へのアンチテーゼとして生まれてきている。
この言葉を生み、一般的に広めたのは、多くの書籍を取り扱う大型書店である。
1970年代以降、霊界や霊的体験に関する著作物、ユリ・ゲラーの来日に伴う超能力現象に関する著作物、ノストラダムス・フィーバーによる預言関連本、さらには欧米のニューエイジ文化の流入に伴い、ヨガ、気功、チャネリング、シャーマニズム関連本など、これまでの「宗教(新宗教)・哲学・心理学」等のいずれのカテゴリーにも属さない分野の書籍が急増した。
そこで書店はこれらのジャンルの書籍を「精神世界」と分類し、コーナー表示を行ったことからこの言葉が一般的に使われるようになった。
ただし、実際の書店の精神世界コーナーには、UFO現象に代表されるような未知現象など、さまざまな関連分野の本も置かれているため、純粋な「精神世界」をそのまま表しているとは言いがたい。
純粋な意味での精神世界とは冒頭にも挙げたように、これまでずっと科学がその存在を無視してきた、「魂」を中心とする人間に内在する力の存在、その目的や可能性を探求し、日常生活をより豊かにするための活動やライフスタイルの模索であると言えるだろう。
また同様に科学がそのメスを入れることのできない、霊的な存在の探求、人間との関係性に対する真実の探求もまた、精神世界に課せられた重要なテーマのひとつであると考えられる。
宗教と精神世界の違いを簡単に示すと、宗教が教祖や特定の神への信仰が主眼であるのに対し、精神世界は、あくまで万人に内在する秘めたる力の性質や可能性の追求が主眼であり、特定の教祖や神の有無、それらへの言及はあくまでも付随事項である点といえる。
ただし、もちろん信仰も心、魂、意識の世界の行為であることから、精神世界と宗教との間に関連性はいろんな面で出てくる。従って、精神世界のコーナーにある書籍には、各宗教から派生した概念に、新たな切り口を加えた形の精神世界書籍も多く出版されている。
近年においては、テレビ番組の影響もあり「スピリチュアル」という言葉がポピュラーになっているが、スピリチュアルは精神世界とイコールと考えていいだろう。

歴史

精神世界には大きく分けて5つの歴史がある。
初期のころから順に追っていくと、「神話・哲学・宗教・心理学・ニューエイジ(最近はスピリチュアルということが多い)」となる。
歴史の流れとともに変容・多様化していった精神世界の在り方をひも解いてみよう。

神話

まず、人類の創始の頃、精神世界の中心に在ったのは神話・民話だ。
ヒーロー・ヒロインが主役のストーリーが多い。創造神話や建国物語、英雄物語、そして民族の叙事詩等が挙げられる。
英雄伝説的な史実に基づいた話と、寓話的な展開を持つものの2種類に大別され、主だったものに、ギリシャ神話や北欧伝説、日本ではイザナギ・イザナミの物語などがある。
最古のものはバビロニア・メソポタミア神話で、紀元前3000年ころ発祥したそうだ。次いでギリシャ・ローマ神話が紀元前8世紀ころ、北欧神話は13世紀ころ、日本の神話は8世紀ころ成立したと言われている。
神話は、基本的には民族や人類、地球、ひいては宇宙がいかにして形成されたかというテーマから当時の人々が自由にイメージしたストーリーが語られているものだ。また、超自然現象(嵐・日照り・津波・雷など)をモチーフにしたものも多い。
科学の発達していなかった時代に、自分たちはどこから来たのか、そして人知を超えた出来事はどうして起こるのか、という疑問への答えを探そうと生み出されていった。
神話や民話には、超自然現象への畏怖と敬意が根本にある。

哲学

時が流れると、ヨーロッパでは哲学が人々の精神世界を満たす新たな思想となった。
祖は紀元前7~6世紀ころのギリシャ哲学とされている。
その後、宗教が席巻し衰退したが(宗教については後の項で述べる)、12世紀ころのスコラ哲学より盛り返してきた。13世紀になるとルネッサンス思想、17世紀ころからは多様化し、学問や宗教より霊感を得た、経験論や合理論などの思想が発展していった。
18世紀ころからは政治に関するもの(啓蒙主義、)、経済活動に関するもの(功利主義)が生まれ、それぞれ発展していく。
19~20世紀は、政治・経済を追求した社会主義思想や、今までの哲学の概念を破壊する実存主義などが生まれた。
中国では11世紀ころより儒学が発達し、江戸時代には日本でもメジャーとなる思想形態となっていった。
日本も明治以降は、西洋の哲学を学んだ人々が独自の思索を発表していく。
哲学は英語では「philosophy」と呼ばれ、語源はラテン語で「知を愛する」という意味を持つ。
人間が人生において、より良い生き方を探求する上で支えとなる考え方、在り方を普遍化し、「知恵」として分かりやすく提示したものなのである。
初期の頃、哲学は自然現象の観察を通して発想のインスピレーションを得ていた。
しかし、人間の活動が多岐に渡るにつれ、それぞれの分野(政治・国家・経済・科学など)における在り方、「根本的にどのような思想を持って各分野へ携わるべきか」を問うものへと変貌していった。

宗教

哲学の発祥と時を同じくした紀元前6世紀ころ、人類最古と言われているユダヤ教が成立した。年月を経て、1世紀ころキリスト教として隆盛をとげていく。
インドでは紀元3世紀ころに仏教が誕生、それは現代に至るまで変化しつつ発展している。
7世紀ころにはヒンズー教、イスラム教も誕生した。
日本には古来より土着の宗教として神道が存在する。また7世ころより仏教が大陸より伝播し広がっていった。
その他無数の密教、新興宗教が世界各国に存在する。
宗教において精神世界は、人知を超えた存在を「神」と崇めて内面的支柱とし、教義を理解することで得られる救い、そして礼拝などでの自己対峙を通して、精神的に成長させることを理想としてきた。
人間を弱く小さい存在とし、善性である「神」の本性へ近づく努力を求めてきたのである。

心理学

心理学とは、人の行動を分析・研究して心の動きを科学的に解明してこうとする学問である。
紀元前3世紀ころ、アリストテレスが「こころ=意識」とする一連の研究を体系化したのが心理学の最古のものだと推測されている。しかし他の分野に比べその歴史は比較的浅い。
心理学が科学の一分野として認知されたのは、1879年にドイツのヴィルヘルム・ヴントがライプツィヒ大学で心理学専門の研究室を開いたときとされている。
19世紀末から20世紀にかけてフロイトやユング、また生理学と連携し研究したパブロフなど様々な科学者が研究を発表していった。
大別すると2種類あり、観察・実験を元に研究を重ねる基礎心理学と、それで得られた法則などを実際の事象に活用させる応用心理学がある。
心理学とは学問の一種であり、科学を用いて人の精神世界を解明しようという近代的発想のもとで誕生した。
中には生理学や病理学と連携しているジャンルもあり、神経や肉体の反応などから、人の内面の動きを明らかにしている。
「このような状況の時はこういう行動を起こしがち」のように具体的なパターンが分かるので、この学問を学ぶと自らの悪癖を抑制したり、対人関係や社会活動に役立てたりなど、大変実用的に活用できるものだと言える。

ニューエイジ(スピリチュアル)

ニューエイジとは1960年ころから、アメリカを中心にいわゆるサブカルチャー層の中から科学至上主義に反発する形で生まれてきた。
語源はキリスト教の終末思想、「今までの時代が終わり新たな愛と幸福の時代が到来する」というものだ。
しかし現代「ニューエイジ」というと、科学や物質的な発想を捨て、本来の人間の直感力を高め霊性に目覚めようという思想と活動のことを指す。
その内容は、呪術的な密教の信仰を取り入れる、チャネリング、神秘体験の推奨、自然回帰運動、等が中心だ。
昨今ではスピリチュアルと呼ばれているものもここに含まれる。霊性を高め自分の波動を磨くと信じられている行動をする。パワースポットへ行く、輪廻転生信仰、パワーストーン、前世療法などが挙げられる。
資本主義経済や科学が発達した20世紀に疑問を投げかける形で、このような発想の精神世界が生まれた。
現代の、理で全て解明しようとする世の中に対し、何か満たされない想いを抱えた人々の心をつかんだのである。
「自己聖化」「宇宙が全ての存在を霊的につなげている」「偶然はなく何もかも必然」等、その発想はやや神秘主義的だ。
現実から離れて、目に見えない存在に思いをはせ、自身の内面もそれらとつながっていると感じ行動することが、魂や精神を向上させるのだと考えられている。

《さ~そ》の心霊知識