個人が個人をターゲットにする「ストーカー行為」に関しては、2000年に対処する法律「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(略称ストーカー規制法)も整備され、すでに多くの人が知るところである。
しかし、集団が個人をターゲットにする「集団ストーカー行為」に関しては、不思議とニュースに登場することも少ないためか、多くの人がその存在を知らずにいる。
現実的には、企業、もしくは宗教団体などが、ある個人に対して、集団で様々な嫌がらせ行為をする「集団ストーカー」は行われており、裁判沙汰になっているケースも多く存在している。
顕著な例としては、2008年5月、元公明党書記長の矢野絢也が、創価学会を告訴したケースであろう。
矢野氏はこの裁判において、創価学会の集団ストーカー行為によって、政治評論家としての活動を著しく妨害されたと訴えている。その行為の中身は訴状ではこう記されている。
<以下、訴状より引用>
7、被告学会に所属すると思われる若い男性10人くらいが待ち受けていて、原告らにカメラのフラッシュを浴びせ、さらに電車の乗り場までついてきた。
15,何者かが、原告宅近くに監視カメラを常設して、原告宅の監視を続け、原告、原告の妻、原告の秘書などが外出する際には数台の車両プラス数名の人員を用いて執拗に尾行を行うなどの威迫行為を継続してきている。尾行者は、原告らが地下鉄や鉄道で移動する際にもその背後につきまとい、原告らは身体の危険を感じることがしばしばである。
この尾行、監視されることの苦痛、危険に耐えかねて、氏名不詳者を被疑者として、警視庁牛込警察署に被害届、保護願いを提出し、警察によるパトロール強化を求めるにまで至った。
<以上、引用終了>
上記の訴状にも示されているが、集団ストーカー行為は、主に以下の4つの手法を中心に構成されている。
1.風評被害
住居の近所・職場・ネット上などに、事実無根の情報を含む、悪評を流す。情報にはターゲット個人が、犯罪者である、精神疾患者や異常行為者(異常性癖の持ち主他)であるなど、著しく個人の尊厳や品格を貶める内容を記すこともある。
2.付きまとい、監視行為
付きまといには主に2種類ある。被害者の情報収集を行うため、ターゲット個人に気づかれないように行う方法と、尾行をわざと気付かせ、監視されていると警告することで、心理的にプレッシャーを与えるための付きまとい行為である。
3.人間関係の操作・かく乱
ターゲット個人の友人や会社の同僚など、交友・交流人脈に、ターゲットのプライバシー情報や、捏造した情報、悪評を流したりすることによって、ターゲット個人の人間関係に不利益を与え、孤立化させるのが目的である。
4.プライバシーの侵害
プライバシーの侵害としては、盗聴・盗撮が代表的な手法。さらに近年では、パソコンに多くのプライバシー情報があることから、パソコンへのハッキング(不正アクセス)・トラッシング(不要データを捨てたごみ箱をあさる)などが行われる。
また、これらの行為によって得た情報を元に、ターゲット個人への「ほのめかし行為」が行われる。これは、個人にしか知り得ない情報をわざと伝えることで、プライバシーの侵害を暗示させ、精神的に追い詰める行為である。
かつては自称集団ストーカー被害者を、一種のノイローゼだと分析した専門家もいる。たしかに過去には一部、妄想が膨らみすぎただけの被害者だった、というケースもあったであろう。しかし、今では訴訟沙汰になっているケースも少なくなく、もはや、すべてのケースが被害者の妄想やノイローゼで解決できるとは言いがたい現状である。
特に宗教団体の場合は、脱退者などに対し、執拗な再勧誘が集団的に行なわれたり、また、自分たちにとって不利益となる言動を抑止するために、集団ストーカーの対象ターゲットにされることが多いようである。
もし、集団ストーカーと思しき行為を受けていると思い当たる人は、一人で解決しようとせず、警察等しかるべき窓口へすみやかに相談に行くべきである。
集団ストーカーは実在する犯罪行為である。集団ストーカー行為の最大の特徴は、相手に暴力などの直接的な行動はせずに、さまざまなテクニックによって心理的に相手を追い詰め、その結果として精神破壊を目的としているという点である。
集団ストーカー行為においては、「刷り込み」、「アンカーリング」といったマインドコントロールの手法が取り入れられている。その中には、相手に幻聴を聞かせるようなテクニックや、妄想をかき立てる様なテクニックも多く存在している。
こうした行為を繰り返されることで精神を病み、その被害を訴えたとしても、幻覚や妄想を特徴とする「統合失調症」と診断され、病気であると処理されてしまうことも多い。
現在、個人ストーカーは規制条令ができたため、法に訴えることでその被害から逃れることができる。しかし「集団ストーカー」に対しては、なんら法的規制も保護もない。つまり、「集団ストーカー」は実在しても、法社会が認めた犯罪行為ではない、というのが現状である。
<集団ストーカーの被害者になるケースとは>
しかし、真性被害者(本当に集団ストーカー行為を受けている被害者)ともなれば、その結果「統合失調症」や「うつ病」「ノイローゼ」などを発症させられることになり、最悪の場合は自殺などへと追い込まれることになる。
最近の事例で言うと、介護疲れによるうつ病自殺とされている元タレントの故・清水由貴子さんだが、音声記録などの証拠から、生前に「集団ストーカー被害」を訴えていたことが知られている。
また、2008年に矢野絢也氏(元公明党委員長)が「政治評論家としての活動を止めるよう強要された」として訴訟を起こしたケースでは、明らかに「集団ストーカー」行為が以前所属していた宗教団体によって行われていたことが、その訴状からもうかがえる。
このように団体にとって不利益な相手に対し、精神的な苦痛やプレッシャーを与えることで、活動の抑制や言論・意思等の掌握を目的とするのが、本来の「集団ストーカー」なのである。
<真性被害者と自称被害者>
インターネット上などをチェックしてみると、多くの被害報告・被害者が存在しているようである。しかしそうした中でも、本当に集団ストーカーの被害を受けているケース(真性被害者)は、少ないと言えるのが現状である。
というのも、集団ストーカー行為を行うにはそれなりに用意周到な準備と人材確保等も含め費用等もかかるわけである。つまり、行う側にもそれなりの「動機・目的」が必要となる。
以前、テレビニュースの特集でも取り上げていたが、ある主婦が「集団ストーカー被害」を訴え、その妄想に取り付かれている様子を報道していた。この主婦の場合も言えるのだが、肝心となる「狙われる動機と目的」は、明らかに欠如してしまっていた。
もちろん集団ストーカーの対象は常に、政治的な大物やマスコミ上の有力者、タレントとは限らない。一介の主婦であれ、そうしたテクニックを有する集団と接触を持ったのであれば、その対象とならないわけではない。
しかし多くの「自称集団ストーカー被害者」たちの言い分を分析してみると、多くの場合、狙われる「動機と目的」が欠落してしまっているのである。
こうした「自称集団ストーカー被害者」が急増しつつあるのは、インターネットの普及と大きな関連がある。インターネットで真性被害者のホームページなどにアクセスした際に、自分の状態との類似を発見し、自分が集団ストーカーの真性被害者であるとの錯覚に至ってしまうのである。
<自称被害者と統合失調症>
統合失調症は、いわば、五感に異常をきたしてしまう精神病だと言える。幻聴や幻覚、妄想もその病理特徴である。つまり、集団ストーカーが行う行為や目的と、自分が体験している病理現象と、さまざまな点での一致点を見出すことになる。
例えば、被害者のホームページでは、集団ストーカーに利用されるさまざまなテクニックに関連した言葉が紹介されているが、こうした用語が「自分は集団ストーカー行為を受けているのだ」と確信させてしまうわけである。
この場合、体験者自身では冷静な判断がもはやできない状態にある。そこで周辺者が本人の事情に耳を傾け、冷静に判断対処していくことが必要だろう。
その際重要なのが、「被害を受ける動機、目的」である。これが認められたのであれば、次に「証拠集め」を行うべきである。十分な動機や目的、そしてさらに「証拠」があれば、次には法的手段に訴えていくのが懸命な措置となる。
もし「動機や目的の欠如」、「証拠の欠如」が確認されれば、それは本人の統合失調もしくは他の精神疾患による捏造のケースが疑われるので、しかるべく医学的処置に専念していくのが「集団ストーカー被害」を根絶できる最善策となると言えるだろう。