欧米において「スピリチュアル」というと、主に次の3つの分野を指し示す。
1)『アメージング・グレース』に代表されるような霊歌を意味する
2)霊的な世界を重視するライフスタイルや価値観を意味する。
3)霊界通信、霊現象全般を探求するスピリチュアリズム(心霊主義)の世界。
しかし日本における「スピリチュアル」という言葉の意味は、主に2)の霊的な世界を重視するライフスタイルや価値観と考えられる。
「スピリチュアル」という言葉がポピュラーになった背景には、2005年から放送の始まったテレビ番組『オーラの泉』のヒットがある。
しかしもう少しさかのぼると、「チャネリング」という言葉・現象と共に1980年代の終盤から日本にやって来た「ニューエイジ文化」(※)と共にスピリチュアルと言う言葉が多用され始めている。これはニューエイジの講師たちが、主に欧米などから多数来日したことと無関係ではないだろう。
このニューエイジ文化における「スピリチュアル」の意味合いとは、人間の魂を中心とした霊的な力の再考察と、それによって導かれる人生の質(QOL)の向上までをニュアンスとして含むものであった。
つまり、これまで科学がほぼ無視してきた、「魂、意識、心」の持つパワーを活かし、宇宙やそのセンターに位置するであろう高次の存在たちとのネットワークを再構築することで、より豊かな人生を築けるという新たなライフスタイルの提案を行ったのである。
一方で、テレビ番組『オーラの泉』では、メインキャストの江原啓之氏と美輪明宏氏らが、守護霊などを中心とする死後の霊的世界観を、幅広く視聴者に訴える番組内容となった。
そのため人によっては、「スピリチュアル」=「霊界の世界観」として捉えている可能性もあるだろう。
この場合、霊界の世界観なら生きている自分とは無関係、という発想に繋がってしまうと、これは正しくない。
スピリチュアルという言葉が意味し、含蓄するのは、見えざる霊的な世界や人間が内在する秘めたるパワーには様々な可能性があり、人間は本来、そうした世界観をも有意義に活用して生きていくべきなのだという教えがあるからである。
同類語に「精神世界」という言葉があるが、これらはすべて、これまで「物質」など目に見える世界のみを重視してきた科学的価値観へのアンバランスを是正すべきというアンチテーゼが含まれているといえる。
つまり、唯物的、唯心といった、どちらかに偏ったものの見方ではなく、物心両面から物事を探求し、バランスのとれた世界観を築くことの重要性への訴求が、「スピリチュアル」という言葉の根底にはあるのだ。
※ニューエイジ文化
ニューエイジとは、1960年代以降に欧米で始まった心身のバランス統合を目指す各種のムーブメント。そもそもは、米国において、ベトナム帰還兵の心の病を治すために、インドのヨガや東洋の瞑想他、さまざまなテクニックを導入したことに端を発している。1980年代からは、シャーマニズムやネイティブ民族の叡智にも注目が集まり、チャネリングや各種ヒーリングメソッドなどを生み出す。
日本では、ニューエイジャーでもあった女優シャーリー・マクレーンの著書『アウト・オン・ア・リム』の発売と共に1990年初頭より大ブームとなった。
日本における一般新聞系メディア(朝日、読売等のメジャー紙)の多くは、スピリチュアルな事象について、ほとんど触れることがない。触れたとしても、宗教学、心理学、文化人類学など、アカデミズムが対象とする事象の範囲か、あるいはパワースポットや都市伝説などを、ちょっとした若者カルチャー的なコラムで取り上げる程度のものである。
一般新聞が、スピリチュアルな事象、テーマと距離を置く理由はいろいろとある。
第一に、多くの場合、スピリチュアルな事象は科学的根拠、もしくは裏づけが取りづらく、記事作成がむずかしい。第二に、一般新聞社各社は自紙に対し宗教色(一般的にはスピリチュアルは宗教色ととられてしまう)がつかないよう配慮しているという点がある。第三に、残念なことだがスピリチュアルな事象は、霊感商法等の犯罪ともリンクしてしまっている一面がある。そこでスピリチュアルを語る人物や団体等を取材報道した後、万が一、その人物(団体)が犯罪とつながってしまっては新聞社の信用は大きく失墜するため、警戒するのである。
第四に、いわゆるカルト教団による反社会行動等への警戒である。その代表例がオウム真理教によるサリン事件他の犯罪だった。これにより、新聞のみならず、テレビ業界も一斉にスピリチュアル(オカルト系なテーマを含む)な事象の取り扱いを自粛した。
こうした大手新聞系メディアのスピリチュアル・アレルギーともいうべき体質は、さらにさかのぼれば、明治時代に福来友吉博士が行った「公開・超心理実験」の顛末にあるのかもしれない。
1910年9月14日、当時、東京帝国大学助教授だった福来友吉は、千里眼の持ち主だった御船千鶴子(映画『リング』の貞子のモデルの一人となった女性)らの能力を、ジャーナリストたちを集めた場で披露させた。しかしその結果、イカサマとも取られるさまざまな疑惑をマスコミに対して与えてしまった。
この実験に先立つ8月14日、当時の『東京朝日新聞』は、「不思議なる透視法」として御船千鶴子の透視やヒーリング能力を紹介しているが、この実験での疑惑以降、こうした超心理(サイキック現象等へのアカデミックなアプローチ)へは、きわめて懐疑的な姿勢を取るようになっていくのである。
ちなみに、日本の大学には「超心理学科」はまだない。この学科は、念力やサイキック現象などのいわゆる超能力現象や意識の世界を、学問的な実験モデルや統計学等で構築することで分析していく学問で、欧米の大学には数は少ないが実在する。
大手マスコミは、権威主義的な側面をたぶんに持つ。つまり、アカデミズムの権威がある事象を論説するならば、その権威の文章責任において報道することも可能となる。
従って大手新聞系メディアが、スピリチュアルな事象を取り上げるには、大学などのアカデミズムの世界に「超心理学」などスピリチュアルな事象をも考察対象とした、新たな学問分野が確立されることが必要なのかもしれない。
雑誌とスピリチュアルな事象の関係は、その雑誌が対象とする読者ターゲットによって変わってきている。
例えば、成人や中高年男女を広く対象とした週刊誌などは、多くの場合、批判的・懐疑的なスタンスを取る。中には、スピリチュアル分野で人が著名になると、躍起になってバッシング報道を行うケースもある。そのいい例が、週刊文春における「江原啓之バッシング報道」だろう。
一方で、10代から30代くらいをターゲットにした雑誌の場合、その世代にブームとしてスピリチュアルがあるならば、それらも掲載テーマとして取り扱う。最近、女性誌などでもさかんに「パワースポット特集」などを行っているのがそのいい例といえる。
また雑誌には、スピリチュアルな事象を専門的に取り扱う雑誌なども存在している。
スピリチュアルな事象や不思議現象等も含めた雑誌は、1995年創刊ラッシュを迎えピークになった。これは、日本におけるニューエイジ文化が広がったことや、当時船井総研会長だった船井幸雄氏などが、著書等でスピリチュアルな事象を企業経営者たちに啓蒙した結果である。また、不思議現象をテーマにした米国のヒットドラマ・映画『Xファイル』の日本でのヒットも大きく影響を与えている。
この1990年代には、大手雑誌社のマガジンハウスまでもが、リラクゼーションをテーマに、スピリチュアルな事象も含んだ雑誌『リラックス』を創刊した。
しかし、ちょうどピークを迎えていた1995年、オウムによるサリン事件が発生し、雑誌業界においても撤退が相次ぎ、現在、定期刊行のスピリチュアル雑誌は3、4誌程度が細々と刊行活動を行っている程度である。
スピリチュアルという言葉はかなりポピュラーになったが、一般の日本人はまだまだスピリチュアルな事象について、専門誌を買ってまで学びたいとは考えていないようだ。
ヒット番組『オーラの泉』の放送によって、「スピリチュアル」という言葉は一躍、日本国中に知られるようになった。それほどに、テレビとは影響力を持ったメディアといえる。
しかしテレビの場合、NHKを除いては、ご存知のように「視聴率が神様」である。従って、それが科学的には未解明なスピリチュアルな事象、もしくは超能力現象であっても、ブームが来ていて一般の関心が向いているならば、特集番組などを組んだりする。
ただしこの場合でも、「読者を啓蒙するような形」は取らない。あくまでも娯楽・エンターテインメントとして、取り扱うのである。
スピリチュアルとは本来、「霊性を高める」「よりポジティブな未来を築く」という、ひとつの生き方の指針、もしくはハウツーといえるだろう。しかしテレビ番組においては、そうしたメッセージ性は極力控え、タレント等を使って霊現象を怖がらせる等、いかに娯楽性を高めるかに主眼が置かれている。そのためか、「心霊現象」をテーマにした番組が多く作られ、人気霊能者として宜保愛子(故人)、木村藤子、織田無道、下ヨシ子等を輩出した。
なぜ娯楽性を重視するかについては、いくつかの理由がある。
まずは、ほとんどの番組制作ディレクターが「生き方アドバイスでは視聴率は取れない」と考えていることによる。その意味では、登場するゲストに対して霊的なアドバイスを行う内容だった『オーラの泉』が高視聴率を得たのは皮肉な結果だったようだ。
また、民放の場合、広告クライアント(広告代理店)への影響や要望を無視できないという点も大きくかかわっている。
『オーラの泉』のようにお説教がウリとも言える番組は別としても、「スピリチュアルな生き方指南」というのは、イメージとして宗教、もしくは新宗教の世界となるため、スポンサーがつかなくなるのである。そこで極力娯楽性を優先し、高視聴率となるような番組コンセプトが作られていくわけである。
こうした「視聴率主義」「クライアント偏向」がある以上、スピリチュアルな事象に関しては、テレビメディアに多くの期待をすることはまだしばらくできないといわざるを得ないだろう。
映画は視覚・聴覚、さらに最近では3Dといった体感にまで訴えられるメディアである。それだけに、スピリチュアルな世界を伝えるのに、最適なメディアだろう。このことはこれまでにも、国内外において、スピリチュアルをテーマにした数多くの映画作品が作られていることが何よりの証明であろう。
スピリチュアルなテーマ(あるいは表現)の中には、言葉や文章では表現しにくかったり、相手にイメージを伝えづらい事象が多々存在する。しかし映画なら、特殊撮影やCGグラフィックなどの手法も駆使できるため、伝い手(原作者もしくは監督)の持っているスピリチュアルなイメージや世界観を、観客と共有しやすくなるわけである。
また、かつての思想検閲が厳しかった時代とは違い、現代においては、暴力描写や性的な表現以外に関して映画制作ではほとんど内容を問われることもない。つまりスピリチュアルな表現は限りなく自由に行えるというのも、映画のメリットである。
では、スピリチュアルな事象を映画がどう扱ってきたか、簡単に紹介しておこう。
まず最初に触れなくてはいけないのが、1973年に公開されると同時に、世界中をパニックに巻き込んだ『エクソシスト』(ウィリアム・フリードキン監督作品)である。
悪魔に憑依された少女と、エクソシズム(悪魔祓い)を行う神父の対決を、実話をベースに再現した映画だった。この『エクソシスト』は、スピリチュアルな世界をテーマにしつつも、同時に、「ホラー」という新ジャンルの草分け的な存在ともなった。
スピリチュアルとホラーの違いを筆者なりの定義づけにおいて記しておきたい。
ホラー映画は「観客を怖がらせることを目的とした映画」だと言える。一方でスピリチュアル映画は「スピリチュアルな世界を伝えることを主眼とした映画」である。
『エクソシスト』はその意味で、どちらの領域をもカバーすることになった作品だが、それ以降の「悪魔祓い系映画」は、どちらかというと「いかに怖がらせるか」が目的だったように感じられる。
ここには「映画=商業主義=いかに観客を動員し儲けるか」という悲しい性があり、純粋なスピリチュアル映画はホラーがらみの領域にはあまり存在していないと筆者は感じる。
ちなみに1982年公開の『ポルターガイスト』(監督:トビー・フーパー、製作:スティーブン・スピルバーグ)も、ホラーとスピリチュアルな世界を同時にリンクさせた映画作品の代表作と言えるだろう。
また、スピリチュアルな映画といえば、宗教的な題材を基に、人間性の向上を訴求する作品も数多く描かれている。例えば日本でも評価が高いものでいうと、アッシジのフランチェスコを主人公にした『ブラザー・サン シスター・ムーン』(1972年イタリア映画、フランコ・ゼフィレッリ監督)などがその代表例だろうか。特にキリスト教から題材を得たものは、世界中に信者もいることから、かなりの数の映画が作成されている。
こうした中で1990年代になると、既存の宗教とは違い、ニューエイジ思想(特定の宗教からの教えに限定されない独立した精神世界)を反映させたスピリチュアルな作品も多く製作されている。
数ある中でひとつ例を挙げると1999年(日本は2000年)公開『グリーンマイル』(監督:フランク・ダラボン、原作:スティーブン・キング、主演:トム・ハンクス)がその代表である。
この映画で犯罪者に仕立て上げられた黒人は、じつはとても精神性の高いヒーラーであり、その彼の心の純粋さ、美しさを188分に渡って描いた作品である。この映画が世界的にヒットしたのは、人気俳優トム・ハンクスが主演だったからではなく、このヒーラーのスピリチュアルな世界観に、世界中の人々が共感したからである。
その意味で、純粋なスピリチュアル映画のヒット作の代表例と位置づけられるだろう。
『グリーンマイル』の大ヒット以降、ヒーリング能力や予知能力など、スピリチュアルなパワーをテーマにした映画作品が相次いで制作されていく。
ここで興味深いデータを提示しておこう。
『グリーンマイル』の原作は作家、スティーブン・キングの同名小説である。スティーブン・キングは、ホラーとスピリチュアル分野の映画に数多くの原作を提供しているが、一般的な認識は「ホラー作家」といえるだろう。しかし、世界的に大ヒットした映画はといえば、『グリーンマイル』、『ショーシャンクの空に』など、人間の精神性を描いた作品だった。つまり大衆は、単に怖がらされるよりも、スピリチュアルな感動を求めている、のかもしれない。
これまでは洋画作品を中心に論述してきたが、邦画においては、ドキュメンタリー・スタイルでスピリチュアルな世界を訴求しているシリーズがある。それが龍村仁監督の『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』である。
この作品は現在、シリーズの7番目にあたる『第七番』までが公開された。毎回、人間の精神性の向上を暗に示唆する人物が世界中から厳選され、「人間のスピリチュアリティへの回帰」(精神的な豊かさの復興)を共通テーマとしたドキュメンタリー映画である。
映画は表現の幅が広いが、しかし、制作費は莫大である。そのため、どうしても商業主義が優先となる。あまり何かしらの教えを与えようとする意図が強い「啓蒙主義」の作品は、大衆から嫌われるためメジャーな映画会社は制作できない。
しかし龍村監督のように、独立した会社を創り自分たちで資金を捻出し、自分たちが伝えたいことを、映像を通しアピールする映画制作者もいるのである。
インターネットの登場によって、スピリチュアルな事象に関心を持つ人々は、確実に増えている。
スピリチュアルな事象・テーマを発信する側にとって、この上なく格好の場となっただけでなく、スピリチュアルな世界をこれから探求したい、というビギナーの人々にとっても好都合の場ができたわけある。
ホームページその他、インターネットであれば発信者は自由に情報を発信できるし、またビギナーの人たちも、さまざまなスピリチュアル情報に無料でアクセスできるので、関心をより深めていくことができる。また、コミュニティサイトなどを活用すれば、スピリチュアルな事象について語り合う場や、友達などを見つけることもできる。
「霊性を高めるための生き方」、「人生を前向きにするノウハウ」など、本当の意味でのスピリチュアル情報を入手するには、インターネットは格好のメディアといえるだろう。ただし、誰もが簡単に情報を発信できるため、時に間違った情報を入手してしまう可能性もある。あるテーマに関して情報を収集する場合、必ず複数の情報を入手し、精査していく姿勢が必要といえるだろう。
また、インターネット詐欺もスピリチュアルな事象と無縁ではないので、そうした悪質な行為にも十分に注意を払う必要があるだろう。
とはいえ、インターネットはまだまだ多くの可能性を持ったメディアである。
スピリチュアルな世界をより多くの人に知らせたいという情報発信側と、リアルなスピリチュアル情報を入手したいという人たちとが、より活発に交流できる場となっていくだろう。
スピリチュアル業界での著名人を以下に敬称略にて挙げてみる。リストには、霊との対話能力、除霊能力、霊視能力等を有する霊能者や、いわゆる超能力、ヒーリング能力等を有するという人も多数登場するが、その能力の真贋等についての言及はしないものとする。
多くのテレビ番組がスピリチュアル業界の著名人を輩出した。
まず「霊能関係」の著名人をリストアップしてみる。
「スピリチュアル」という言葉をメジャーに押し上げたのは、テレビ番組『オーラの泉』に出演した江原啓之と美輪明宏である。こうしたテレビが育てた霊能者としては、他にも宜保愛子(故人)、木村藤子、織田無道、下ヨシ子、川井春水などがいる。
また、テレビ出演した「占い師」も多いが、著名というレベルでは細木和子であろう。
次に「超能力や超常現象系」の番組からも著名人が登場した。1970年代にスプーン曲げブームを日本にもたらせたのはユリ・ゲラーだった。筆者はゲラー氏に会ったことがあるが、実際のゲラー氏は、「人間の霊性の重要性」について、しっかりとした考えを持ったスピリチュアルな人である。
日本にユリ・ゲラーを招聘しテレビに登場させたのは、当時日本テレビのディレクターだった矢追純一で、矢追はその後UFO番組をスタートさせ、自身の名も著名になった。筆者は矢追とも面識があるが、最近は矢追自身が構築したヒーリング・テクニックやスピリチュアルな考え方を伝える活動なども行っている。また、このスプーン曲げブームによって、清田益章、秋山眞人など、当時の超能力少年たちも著名になった。ちなみに、清田、秋山の両名とも現在もスピリチュアル分野において、さまざまな活動をしている。
また、UFOをはじめとする超常現象系の番組からは、肯定派と否定派に分かれた真贋論争番組が人気となり、早稲田大学の大槻義彦教授、たま出版社長の韮澤潤一郎らが、揃ってTVCMに出演するほどに有名人となった。
預言・予知・透視等の事象でもテレビ番組から著名人が生まれた。これらは主に外国人で、ノストラダムス(故人)、ジュセリーノ(ブラジル)、ジョー・マクモニーグル(米国)らがいる。
<日本>
ここでは明治時代以降の著名人について紹介していく。
現存するさまざまな新宗教の源となった「大本教」の開祖、出口なおの後継者として頭角を現したのが、『霊界物語』等の著書で知られる出口王仁三郎(1871年8月27日~1948年1月19日)だった。
超能力などの現象においては、当時東京帝国大学助教授だった福来友吉(1869年12月5日~1952年3月13日)らによって、念写実験等が行われ、社会にセンセーショナルな話題を提供した。また、福来の実験に協力した超能力者として、御船千鶴子・長尾郁子・高橋貞子・三田光一らの名前も、当時のマスコミをにぎわせる(大ヒットしたホラー邦画『リング』に登場する貞子は、高橋貞子らをモデルにしたものである)。
日本初のヨガ行者として登場し、独自の心身統一法を提供したのが中村天風(1876年7月30日~1968年12月1日)だった。中村天風の最大の功績は、政財界のリーダーたちへもスピリチュアルな教えを普及させたことにあるだろう。中村を師事した財界人には、松下幸之助、稲盛和夫など多数いる。
俳優としての知名度を活かし、霊界や霊性の向上に関する啓蒙活動を行ったのが、丹波哲郎(1922年7月17日~2006年9月24日)だった。
<海外>
スウェーデンが生んだ博識科学者にして、霊能力者だったのがエマヌエル・スヴェーデンボリ(日本の書籍での氏名表示のほとんどは、エマニュエル・スウェーデンボルグ1688年1月29日~1772年3月29日)である。死後に出版された『霊界日記』他、その著書は、キリスト教関係者をはじめ、現代のニューエイジ運動の創始者たちなどへも多大な影響を与えている。
預言(予言)やアカシックレコードなどの存在を世界に知らしめ、多くのスピリチュアル・リーダーたちに多大な影響を与えたのが、エドガー・ケイシー(1877年3月18日~1945年1月3日)だった。また、ケイシーは単に予言を発信するだけでなく、健康法やスピリチュアルな生き方の実践的なノウハウを啓蒙したことで知られている。
スピリチュアルな教えを学校や教育メソッドにまで広げたのが、「人智学」の創始者、ルドルフ・シュタイナー(1861年2月27日~1925年3月30日)である。シュタイナーの教えを実践する教育機関である「シュタイナー学校」は現在でも、日本を含め、全世界に設立されている。また、メソッド化された「シュタイナー教育」も同様に、世界で実践している人たちがいる。
19世紀のスピリチュアリズム(交霊会などを中心とした霊界探求)の中心的な人物となったのが「神智学」の創始者、ブラヴァツキー夫人(マダム・ブラヴァツキー、1831年8月12日~1891年5月8日)である。さまざまな宗教のエソテリック(秘教的)な教えをミックスし、その後に生まれる多くのオカルト思想の礎ともなった。
70年代から始まった欧米型の精神世界ブームである「ニューエイジ」が、日本において花開いたのは1986年だった。そのきっかけをつくったのが、女優シャーリー・マクレーンの著書『アウト・オン・ア・リム』である。また、この著書を翻訳した山川紘矢・亜希子夫妻も、その後スピリチュアル業界における人気翻訳家となり、現在では翻訳以外にも講演会や自身のセミナーも開催している。
欧米、日本でのニューエイジでの著名人といえば、バグワン・シュリ・ラジニーシ(通称、和尚、1931年12月11日~1990年1月19日)、TM瞑想の創始者であるマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー(1918年1月12日~ 2008年2月5日)がいる。
さらに1980年代の終盤には米国からチャネラーのダリル・アンカが来日し、「バシャール」という宇宙意識体からの「ワクワクしよう」他の、スピリチュアルなメッセージが話題になる。これを機に、日本には「チャネリング・ブーム」が到来する。
ちなみにニューエイジにおけるチャネリングのほとんどは、死者等との交信、つまり霊界通信ではなく、外宇宙である異星人や高次存在などといわれる対象等とのコンタクトである。またメッセージは「いかにスピリチュアリティ(精神性)を高めて生きるか」についての言及が多い。
1990年代に入ってからは、青山圭秀の著書『理性のゆらぎ』が、物質化能力等を発揮するインドの聖者サティア・サイババを紹介。これによりテレビ局等も現地へ取材に行くなど、日本でサイババブームとなる。
企業経営者たちにスピリチュアルな考え方や、さまざまな事象について、著書にて啓蒙したのが船井総研の会長、船井幸雄だった。船井もサイババを賞賛したことから、多くの企業経営者までもがサイババに会いに行くなどのブームとなったのである。
また、船井が著書で「超能力者」として紹介した久村俊英は、長崎県川棚のマジック喫茶『あんでるせん』の店主である。90年代に著書で船井が紹介して以来、現に至るまで、連日多くの客が日本全国からやって来ている。筆者も2回ほど訪れているが、マジックの内容もすごいが、その間にマスターが語るスピリチュアルな教えのエピソードも、興味深いものがあった。
船井氏以前にも、実業界においてスピリチュアルな思想を持った経営者は多い。著名なところで言うと仏門における得度を得た現在JAL会長の稲盛和夫。また、ビジネス書とスピリチュアルな啓蒙書の両面から本を出版するPHP出版社は、パナソニック創始者松下幸之助(1894年11月27日~1989年4月27日)によって設立され、その根幹には松下のスピリチュアリティの継承がある。
またソニー創業者の一人、井深大(1908年4月11日~1997年12月19日)は、ソニー内に「エスパー研究所」(現在は廃止)を設け、人間の能力や精神性に関する研究を行った。
若い世代から支持されているスピリチュアルな著名人として、元芸人であり、ストリートパフォーマーでもあるてんつくまん、「ありがとう」を「幸運を呼ぶ魔法の言葉」としてブームにした五日市剛などがいる。
近年では、スピリチュアルとエコロジーが相互にリンクしたライフスタイルも生まれている。女優業から、そうしたスピリチュアル&エコロジーな啓蒙活動への転身を開始しているのが高樹沙耶である。
また最近では、インターネット上に作ったブログが人気を博し、本の出版へとつながるケースも多く存在している。その好例が、神道系の教えをベースにスピリチュアルな教えを発信している伊勢白山道である。