数秘術とは、数に意味を与え、その意味を分析する占術である。
もっともポピュラーな占術方法は「命術」と呼ばれる。
これは占う人の生年月日(西暦)や姓名などを決められた方法で数字に置き換え、さらに、固有の計算式に基づいて運勢や宿命などを占う方法である。
数秘術の基本体系を構築したのは、古代ギリシアの数学者ピタゴラス(B.C.582~B.C.496)であり、その教えを継承した「ピタゴラス教団」とされている。
ピタゴラスはあらゆる事象は、数字と関係性・法則性を持つとして、『アルケー(物事の根源)は数である』とした。
こうしたピタゴラスの思想を反映させて、宇宙の出来事から、地球上での人間の天命や個性に至るまでを数秘術によって推断したのである。
数秘術はその後、古代バビロニア(B.C.2000~)、古代インド、中国、エジプト、ローマ帝国にも影響を与えているのみならず、世界中の宗教にも影響を与えている。
特に有名なのは、ユダヤ教の秘教であるカバラにおいて確立された「カバラ数秘術」という体系である。
生年月日で占う場合は、生年月日(グレゴリオ暦)を『単数変換(減衰加法)』させる。例えば1985年5月7日生まれの人であれば、1+9+8+5+5+7=38となる。
さらに3+8=11となり、1+1=2となるため「2」が生年月日から分析した運数となる。
氏名で占う場合は、氏名をローマ字にして各アルファベットに対応する数字に置換える。このようなパターンで分析を行うのが基本的な方法である。
ただし、変換方法や算出方法等、さらに運勢鑑定の分析方法等は、数秘術の体系・技法などによって異なる場合もある。
数秘術で使う数字は「1~10」までの各数とカバラ数秘術体系「11」「22」「33」である。
●「1」
物事の始まり、スタート、有、男性性、行動、斬新、自己主張、理性、決断力など。
ゼロが発見されるまでは、1が最小だったため、数秘術において1は神を示す神聖な数字ともされてきた。
●「2」
調和、結合、人間関係、協力、女性性、比較、対立、分類、受ける、境界、感受性など。古代中国の『陰陽思想』では重要な数と考える。
●「3」
外向的、自己表現、生産、ポジティブ、能動と受動の合体、生命の誕生(1と2の合体により)、知性など。
キリスト教では『三位一体』という概念があるように3は聖なる数字。
●「4」
固定、規律、物質的、建設、実際的、真面目、持久力、堅実、強情、安定など。
万物を構成する火・水・土・空気の四元素から、4は「権威」「王国」の象徴ともされる。
●「5」
変化、自由、多才、移行、刺激、冒険、多様性、分析、破壊など。
古代中国の『五行思想』では、木・火・土・金・水の五元素を重んじた。
キリスト教では四大元素に加わるものとして「神の息吹」を示す数字。
●「6」
友愛、結婚、美、理想、道徳、母性、責任と義務、家族や家庭など。
最小の『完全数(その数自身を除く約数の和が、その数自身と等しい自然数)』であることから、完全美を象徴。
ユダヤ教では『六芒星(ヘキサグラム)=ダビデの星』の象徴であり、聖なる数である。
●「7」
探究心、孤独、英知、哲学、神秘主義、形而上学的、調査、内的情熱、瞑想など。
キリスト教においては、安息日、『7つの大罪(傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲)』などから7を重んじている。
ピタゴラスも7を重要な数とした。
●「8」
力、物質的価値、組織、権威、自己制御、制限、野心、大胆、短気、支配など。
日本や中国では『8(八)』は末広がりに繋がることから、めでたい数字とする。
また古代日本や神道では、八島、八雲、八咫鏡、八重桜、等8は聖なる数である。
●「9」
物事の終わり、完全、世界、寛大、全体的意識、混沌、自然、変容など。
●「10」
高次元化された『1』、完成、新たなステージでのスタートなど。
※10 は命術で用いられる際には、単数変換で『1』となるため、性格分析等では10は使われない。
●「11」
スピリチュアル、霊的感受性、直観、空想、洞察力、進取的など。
※11 は命術で用いられる際には、単数変換で『2』となるため、性格分析等では11は使われない。
●「22」
偉大、偉業、建設、創造、絶対的方向性、支配、世界的事業など。
※22 は命術で用いられる際には、単数変換で『4』となるため、性格分析等では22は使われない。
●「33」
普遍的人類愛、奉仕、無償の愛、悟りなど。
※33は命術で用いられる際には、単数変換で『6』となるため、性格分析等では33は使われない。
ユダヤ教神秘思想カバラにおいて体系された「カバラ数秘術」は、特に欧米において、数秘術をポピュラーな占術にした立役者である。
カバラ数秘術では、誕生日や姓名などから「運命数」と呼ばれる数字を割り出す。
さらに強い力をもつ数字として、11・22・33の3つの数字を「マスターナンバー」と呼ぶ。
カバラは「生命の樹(セフィロト)」と呼ぶ構造図を重んじる神秘思想で、この「生命の樹」は10個の球(セフィラ)と22本の小径(パス)で構成されている。
かなり複雑な数秘体系なので詳細は個々では省くが、これらすべてが数字で表され、複雑に絡むことで神と人間の関係性を浮き彫りにしていくのである。