心霊治療とは、心霊治療師が神がかり的な力によって、病気等を癒す現象をさす。心霊治療は現代においても、東南アジア諸国、南米大陸、その他シャーマニズム文化などが残る地域などで実際に行われている。
日本人の間でも特に「フィリピンの心霊治療」は話題となり、多くの日本人がフィリピンを訪れ、心霊治療によって病を治癒させている症例がある。
心霊治療の手法は国や治療師によって多少異なるが、フィリピンの場合、心霊治療師は医療器具等は一切使わず、素手で患者の患部にマッサージするような形で手を触れるだけである。この際、心霊治療師の手が患者に触れると、赤い血のような液体が流れたり、肉片・肉塊のようなものが現出する「物質化現象」が起こる(物質化現象を起さない心霊治療も存在する)。しかし、患者には一切の痛みはない。
この「物質化現象」は、これまでも多くの科学者や医師が立会い、現象の確認と検証が行われてきたが、なぜこうした現象が起こるのかは解明されていない。一説には、「患者の体内の邪気を、治療師の手がマグネット状態にして吸い寄せ、治療師の手のエネルギーによって気体だった邪気が、体外で液体もしくは固体へと変質させられている」という説もある。
一方、ブラジルで世界的に有名な心霊治療師、ドクター・フリッツの場合は、患者に麻酔をしないままメス等の医療器具等を使って患部を切開することで知られている。この場合も、患者に痛みは一切感じられないことが、多くの患者の証言によって明らかになっている。
また、患者には一切手も触れずに、多くの病気を治癒させた治療師も過去にいた。それが1950年代に、ドイツや周辺ヨーロッパ諸国で「奇跡のヒーラー」として話題になった、ブルーノ・グルーニング(1906-59)である。グルーニング氏は幼少の頃から特異な体質を持っていた。それは「ブルーノがそばにいると病気が治る」というものだった。成人後もその現象は続き、グルーニング氏本人は「病気を治すのは神である。治りたければ神に祈りなさい。私はそれを伝えにやってきた」と神への信仰を説いた。その一方で、広場に病人が数千人規模で集まり、グルーニング氏はバルコニーに立つだけ、という状況で数多くの病人がその場で治癒されるという現象が起こり、多くのマスメディアが取り上げ、医学界にも大きな波紋を投げかけた。
これまで紹介した、フィリピン、ブラジル、そしてグルーニング氏ら、すべての心霊治療師に共通しているのは、「治療師は単に神の道具であり、偉大な治癒の力は、すべて神が与えてくれている」と信じていることである。
また、心霊治療によって、西洋医学で見放された多くの患者が治癒されているケースがある一方で、心霊治療を受けたからといってすべての病気が完全に癒えるとは断言できない。これは多くの心霊治療師自身も「治せるケースと治せないケースがある」と、完璧な治療法ではないことを認めている。
心霊治療が真実か否かについては、少なくとも、フィリピン、タイ、ブラジルでの著名ヒーラーたちはすべて、科学者や医師の立会い検証を受け、「インチキではない」という証言を得ている。また、多くの心霊治療師がボランティアで治療行為を行っている(一部、ヒーラーを生業としているというケースも見受けられる)。
いずれにせよ心霊治療とは、薬も買えず、西洋医療施設などにはかかれない、貧しい人々が多くいる村落などにおいて、信仰が仲介することで「神の救済措置」として起こっている奇跡現象のひとつと言える。
重要なことは、心霊治療の真贋よりもむしろ、こうした現象によって救済されている貧しい人々や困難な病から救済されている人々が多くいるということ。そして、人々の救済のために無私・無欲で自分の身体を神に捧げる治療師の存在があるということであろう。
従って、救済の需要と奉仕者の供給が世界のどこかにある限り、心霊治療は今後も起き続けると考えられる。現代科学が心霊治療をどう分析しようとも、救済が必要な人たちにとっては、純粋な真実であり「神からの愛」に他ならないのである。