守護天使とは、天使の9階級のなかで最も低い位置に存在する天使のことを指す。これはカトリック信仰独特と呼称で、その解釈によると、生誕のときに一人に対して必ずひとりの守護天使がつき、死ぬまであらゆる事象から守り導き、ともに人生を歩む存在として活躍すると言われる。また複数の守護天使がついているという説や、人生の節目や大事などに守護天使が別の天使と入れ替わる場合もある、などという考えもある。
他の信仰や現在のスピリチュアリズムでいうところの、守護霊とその役割はほぼ同義であると言ってもよいだろう。
守護天使の起源はキリスト教のなかでも比較的新しいものとされる。旧約聖書において、ノアの子孫らのことを指していたもとが始まりだ。有名な「ノアの箱舟」の逸話の後には、ノアの子孫が後に国家の守護天使としてはたらいた旨の記述がある。
紀元前2000年紀初頭、古代オリエント地域では、国家を統治しているのは神であったと考えられていた。王は神の代理者に過ぎないというくらいに位置づけられていたのである。これは歴史を記す石碑・碑文等にも「ある国の神が侵入軍を大破した」などという形態で言葉が刻まれていることから明らかである。この思想をもとに神の使徒としてはたらく守護天使も存在したのでは、という流れで存在を認められたらしい。
ちなみにノアの子孫の彼らは、使徒として世界各地に散らばり、およそ70の国を守ったと言われている。
ただ、現在分かっている守護天使と、守護していたとされる国は以下の4人のみである。
ミカエル―イスラエル
ドビエル―ペルシア
ラハブ―エジプト
サマエル―ローマ
その後、概念は時代とともに発展していき、地域や個人を守護する存在へと変遷して行った。
守護天使は、あらゆる精霊たちの中でも最も厳しい精霊といわれている。
天界の位が上部に位置する大天使たちの支配下で、天からの命や裁きを届けつつも国家・地域・個人のために、自分の存在を賭して奉仕するのが使命である。例えば国家や個人が自分らの都合で祈願成就をしたり、その結果まるで小間使いや奴隷のように働かされたりしたとしても、自分自陣の不平は抜きにして、忠実に奉仕をしなくてはならない。
これは彼らの霊格を挙げるための魂の試練なのである。自分より霊的に低い存在に対して、心からの奉仕を滞りなく勤め上げることでその後の天界における地位の向上が約束されている。そのため下級霊格への奉仕を屈辱に感じるはない。
無論、我欲に満ちた祈願成就ばかりを要求する人間へは、多くの嫌悪感を覚えるそうだが、だからといって罰や試練を与えるということはない。守護天使たちには人に裁きを与える権限は与えられていないためである。ただ、人間の言動や所業を、彼らは天界の上層部へと細部に渡ってごまかすことなく報告するという責務を持っている。ある程度天罪が溜まっていくと、上層部からは裁きや罰、その他の天命が下されるので、守護天使がそれを実行に移す、という仕組みである。