エネルギー・ワークとは、人間の肉体に付随する「エネルギー部位」に働きかけ、状態の改善等を促す行為を指す。
この場合の「エネルギー部位」とは、静電気など肉体が持つ実際の電気的作用を指す場合もあるが、多くは「オーラ」「エーテル体」「アストラル体」など、科学的には仮想のエネルギー体の存在を対象にした行為が多い。
一般的には「ヒーリング」と呼ばれることもある。
エネルギー・ワークという場合、その多くは気功やレイキなどに代表されるように、対象者の体には直接触れないで施術されることが多い。
1990年代に日本でブームになったニューエイジの流れで、米国から日本に流入された「レイキ」は、そもそも逆輸入である。
レイキは元々、日本伝承の民間療法・手かざし療法で「臼井靈氣療法」が欧米で広まったものだった。
その後米国では手かざし・手当て療法がポピュラーとなり、90年代には医療現場でも「セラピューティックタッチ」といった療法など、医師や看護婦が臨床現場で実践する手かざし療法も出現している。
このような手かざしによるヒーリングスタイルは、エネルギー・ワークのベーシックなスタイルとなっている。
代表的なエネルギー・ワークはこのように人間が人間の能力によって行うものの他に、ツールを使うものもある。
その代表例が「クリスタル・ワーク」のように、水晶を始めとするパワーストーン各種を使用したエネルギー・ワークである。
この場合は、主にチャクラやオーラを、クリスタル類を利用することで癒すことなどが目的とされる。
エネルギー・ワークの場合は、医療行為ではないため、「病気の改善目的」など、薬事法に抵触することは行えない。
従って参加する場合も、その点には注意が必要である。
というのも中には、病気直しを名目にうたい、高額な費用等を請求するケースもあるからである。
エネルギー・ワークというのは、あくまでも見えないエネルギー部位に働きかける行為である。
もちろんその結果、体調が改善する等のさまざまないい結果を体験するという事例は数多い。
しかし、その結果が必ず保証されるわけではないし、また、エネルギー・ワークを行う側も、なんら医療的な結果については保証などはしてはいけないのである。
また、エネルギー・ワークを継続させるために、なにかしらの物品の購入を強いるといった霊感商法に近い詐欺行為などにも十分に気をつけるべきであろう。
エネルギーワークの発祥は、密教系の宗教に端を発すると推測される。
文明以前、また古代文明(4大文明、~ギリシャ・ローマ文明期)において、いわゆるシャーマン、人々の健康や精神を触手なしに行っていたことはたびたび語られている。
その方法は祈祷、手かざしなど現代にも通じるワークが中心だが、特に歌唱を中心とする音楽がよく用いられたそうだ。
施術者の前で決まった歌を歌ったり、特殊な楽器を演奏して働きかけたりすることで体内に眠っていたパワーを引き出し、病気を治したり霊性を目覚めさせたりしていたらしい。
またギリシャでは、哲学者ピタゴラス・プラトン・アリストテレスらが、今でいう音楽療法のようなことを実践していた。「同質の原理」で、悲しいときには美麗で物悲しい旋律を始めに聞いてから、明るい曲調に移行させることで、人々の精神をポジティブに転換したと言い伝えられている。この時代は、音楽療法が不思議なパワーワークとして捉えられていた。
日本でも古代、卑弥呼に代表されるシャーマンと呼ばれる霊能者が呪術や舞踏などを用いて、病気や不調の人々に医療行為を施してきた。
また平安時代に書かれた「源氏物語」の中でも、病に伏す葵の上へ対して、医療行為の他に、僧や呪術師が集められ祈りを捧げ快癒を念じでいた、というくだりがある。このことから当時は、エネルギーワークが盛んに行われていたことが分かる。
・イエス・キリストについて
キリストは、歴史上、最大のシャーマンでエネルギワーカーの第1人者でもあったと言われる。それは聖書にも明記されており、手かざしや言葉かけで病人を治すさまが描かれている。
主な例を以下に列記する。
・沢山の民衆が、イエスの所へ、悪霊に憑かれおかしくなった人を連れてきた。彼は、神からの御言葉をかけそれらを追い払い健康を与えた。(マタイ8章16節より)
・悪霊の仕業で病となり、盲目になり、話すことも出来なくなっている人へ、イエスは癒しを与え、口をきいたり目を見えるようにしたりした。(マタイ12章22節より)
・アントン・メスメルと催眠
フランツ・アントン・メスメル(1734~1815、ドイツ)は催眠、そしてそれによるヒーリングを初めて世に広めた人物だと言われている。
元は医学者であったが、彼は、健康を保っているのは、体内に存在する何千のチャンネル(チャクラなどに近いだろう)と、それを自由に行き来する「流体」の流れが正常であることと考えていた。「流体」の流れが何らかの理由でさえぎられると病気になる。したがって、チャンネルが正しく存在し、流体とその流れが自然になれば健康体を取り戻せると考え、その治療に催眠、磁気、気功のようなもの(手かざしも含む)、グラスハーモニカの演奏などを用いた。施術者はやがて身体にピリッとしびれのようなものを感じ、快癒したそうだ。
・イギリスのヒーラーたち
イギリスには「英国スピリチュアルヒーラー連盟」という団体があり、その分野の研究と実践には大変理解がある。
その初期に活躍していた主なヒーラーを挙げる。
ハリー・エドワーズ (1839~1976)
スピリチュアリズムを研究し、発展させた治療家。
彼はスピリチュアル・ヒーリングと呼ばれる治療を用いて、現代医学では治すことが出来ない病に侵されたと宣告された人々へ対し、独自の技術で次々と患者を回復させた。その高い技術は「奇跡のヒーラー」と称されるほどであった。
NSFH(英国スピリチュアルヒーラー連盟)の創設者。
ジョージ・チャップマン
イギリスの消防夫だが、亡くなった眼科医に憑依(本人談)されてから、患者に触れることなく目の疾患を治せるようになった。
彼の施術は、キリストが行っていた手かざしの治療に似ていたらしい。
・フィリピンやブラジルのヒーラー
19世紀にアラン・カルデック(フランス、1804~1869)は独自の理論に基づくスピリチュアリズムを提唱したが、本国フランスでは隆盛を見せなかった。しかし、20世紀に入ってからブラジルとフィリピンに伝えられたことで再び脚光を浴びた。
彼の考えに影響を受けたヒーラーに、ブラジルではホセ・アリーゴ、フィリピンではトニー・アグパオアなどがいる。彼らはエネルギーワークを霊的治療と称して行い、スピリチュアル・ヒーラーの名で活躍していた。
フィリピンでは、カルデックの教えを伝承する形で1989年にスピリチュアル・ヒーラの団体が発足した。ここには数百人の人々が所属し、最新のヒーリング技術が日々研究されている。
・日本のヒーラー
現代では多くのヒーリング団体、個人での活動が盛んに行われている日本だが、近代の初発のヒーラーは、九州の農家だった。
第二次世界大戦時、長洲に住む松下松蔵は、当時の医学では治療が出来なかった結核やハンセン病、また癌などをヒーリングにより直していたそうだ。これは一大ムーブメントとなり、毎週末、最寄駅から施術希望者に対し、送迎バスが出ていたらしい。その様子を記したドキュメント本も出版されている。