真霊論-藁人形の呪い

藁人形の呪い

はじめに ブラック・マジックに関する諸注意

本稿には、「藁人形による呪い」に関するさまざまな情報が出てくる。あらかじめ断っておきたいのは、あなたが本稿にていかなる情報を入手しようとも、決して「藁人形による呪い」を実践しよう、などとは思わないことである。科学が進んだ現代社会においても、世界のあちらこちらには呪術師がいまだに存在している。そしてブラック・マジック(ネガティブな呪術)もホワイト・マジック(ポジティブな呪術)も実在している。これから情報を提示する「藁人形による呪い」は、多くの人がブラック・マジックの一種として、とらえている。このブラック・マジックというのは、それがどういう内容であれ「必ず術者にしっぺ返しが来るもの」なのだ。このことを最初の情報として提示しておきたい。ブラック・マジックをかけるということは、術者は自分の魂を、「ブラック・マジックを可能にするエネルギー的な存在」に委ねることを意味する。わかりやすく言えば、「悪魔に魂を売る行為」なのである。従って、決してこのようなブラック・マジックを試みようと思ってはならない。

藁人形の呪い 丑の刻参りの本来の姿

人形にした藁人形を使って呪いをかける「藁人形の呪い」は、別称、「丑の刻参り」と呼ばれている。この「丑の刻参り」自体は元来、じつは呪術ではなく、単なる「祈願行事」だったのである。そこでまず、「丑の刻参り」に関して触れておこう。舞台となったのは京都・貴船神社である。貴船神社の祭神である「高おかみ神」は、命の源である水を司る神として知られ、平安時代においての貴船神社の社格は「名神大社」という最も高いものだった。つまり、平安時代の人たちは「高おかみ神」を崇拝の対象としていたのである。この「高おかみ神」は伝説として、「丑の刻」(現代の深夜二時ごろ)に降臨されたというものがある。そこで丑の刻に貴船神社へ詣で、「高おかみ神」に祈願成就を祈ったのが、本来の「丑の刻参り」だったのである。それがなぜ、「呪いの儀式」となったのか、その経緯を明かしていこう。

平安時代の呪術師、陰陽師の存在

平安時代には、賀茂忠行(かものただゆき)、安倍晴明(あべのせいめい)、蘆屋道満(あしやどうまん)など、カリスマ的な陰陽師が存在し、社会的にも認められた存在だった。また、これら陰陽師によって、日本で最も呪術が盛んだったのが、この平安時代でもあった。「藁人形」とは「人型」であり、その藁人形に呪う対象者ゆかりの物品を入れる、というこの呪術のスタイルは、陰陽師が始めたものだといっていいだろう。もちろん、呪術が形成された背景には、単に陰陽道だけでなく、陰陽師に呪術を教えた道教や修験道、後述するその他の秘教文化、さまざまなエッセンスが「藁人形の呪い」には入り込んでいる。さて、人型に対して呪いをかけるという呪術が、なぜ「丑の刻参り」とつながったか。これを説明するには、貴船神社の祭神について、もっと説明する必要がある。じつは貴船神社の祭神、「高おかみ神」には別称がある。それが「闇おかみ神」(くらおかみのかみ)である。貴船神社の説明では、「これらの神は同一のもの」とされている。しかし陰陽師たちにとっては、違ったようである。つまり、「闇おかみ神」に対しての祈願は、「藁人形」を使った呪術儀式だったのである。ただし、この陰陽師の藁人形を使った丑の刻参りは、決して人を陥れるための呪いではなかったのである。このことに関しては、後述する。しかし、この陰陽師の儀式が、「呪いの儀式」として誤解を持って知れ渡ったため、この陰陽師の丑の刻参りを模した、ブラック・マジックとしての「丑の刻参り」が、現代に至るまで伝わってしまっているのである。

ブラック・マジックとしての藁人形の呪い

インターネットを見ると、多くのサイトがこの呪術に関しての情報を提供している。その内容は、主に以下の内容である。服装は白装束、顔には白粉、濃い口紅、          足にはロウソク、胸にかけた鏡。呪い道具は、口にくわえた「五寸釘」、右手には「金槌(かなづち)」、左手には敵にみたてた「わら人形」。丑の時(一時から三時)に、 人に見られない様に、呪いの言葉を述べながら人形に呪いの五寸釘を打ちつける。これを七日間続けると、呪いは成就(じょうじゅ)する。ざっとこんな内容であろう。さて、なぜこうしたデータを紹介したかというと、これは呪術としては、間違っているからである。もし実際にやったとしても、何の効果もないのでまったく無意味である。ただし、人に対してネガティブな呪いをかけるブラック・マジックとしての「藁人形の呪い」は実在する。ハイチなどにある、ブードゥー教の呪いが、その技法を実践している。しかし、この呪いを正確に行ったとしても、対象者は死なない。その人体に、無数の針が入り込むというのが、実際に起こっている顕著な効果である。ただ、冒頭にも書いたように、こうした呪いのしっぺ返しは、2010年のハイチ地震の惨事がよく代弁しているといえるだろう。この地震で多くのブードゥー教の呪術者が亡くなっているのである。このことを肝に銘じて、ブラック・マジックで恨みを晴らそう、などとは絶対に考えてはいけないのである。

呪い代行サイトなどの悪質商法には要注意

インターネットを見ると、「藁人形の呪い代行サイト」なるものが多数存在する。前述したように、まず、これらのサイトの知識とスキルでは、呪術などは実践できない。従って、絶対に関わってはいけないので要注意である。また「呪いのキット」なるものも、通販で売られていたと思う。こうしたものも、「まったく効果は無い」し、そもそもこうしたもので人をおとしめようなどと考えては、自分の魂を悪魔に売り渡すだけになるので、絶対に触れてはいけない。

本来の藁人形の儀式に秘められたもの

さて、陰陽師たちが密かに行った、藁人形の儀式について、最後に触れておきたい。最初に断っておくが、以下の論説は、まだ史実ではない、仮説も加わっている。その点、ご了承いただきたい。陰陽師たちが密かに行った、藁人形の儀式はいわば神道的な儀式だったのである。つまり、「神に通じるための儀式」である。丑の刻参りで「胸に鏡をかける」のは、天照大神の岩戸開きにちなんだ、合わせ鏡の儀式のためのものである。さらに、なぜ陰陽師は藁人形をご神木に打ち付けたのか、そこには重大な秘密がある。これは「イエスキリストの磔刑を模した儀式」と言われている。なぜ、陰陽師がイエスか? と、思われる方も多いだろう。それは陰陽師には既に、ユダヤ教神秘主義のカバラの教えが伝わっていたからである。その証左は多くあるがここでは割愛する。つまり、雛形となった「藁人形の儀式」は、呪い等ではなく、日本だけでなく世界中の聖者や神々と繋がり、自身の能力や魂をより崇高なものにするための「秘儀」だったのである。丑の刻参りで頭にかぶる「鉄輪」と立てられた3本のロウソクは、イエス茨の冠でもあり、カバラが伝える重要な3神をそれぞれ現している。これが本来の「藁人形の儀式」であり、決して、呪いの儀式などではない。従って、これを模した呪いの儀式を行っても、決して効果が得られない、ということを理解していただきたい。

《ら~わ》の心霊知識