正統的な西洋医学療法(および有資格者に限定された医療行為)には該当しない、様々な手法によって、「心身に癒し」を与える行為を指す。日本ではご存知のように、有償で病気を治すには該当する国家資格が必要である。従って「ヒーリング」とは、あくまで治療行為ではなく、癒しを与える行為である。
1980年以降、日本には大きく二つのムーブメントが巻き起こった。ひとつは、ヨガや気功などの流入に端を発する健康志向ブームである。もうひとつは、チャネリング、パワーストーン、レイキ他の多くのヒーリング・テクニックをも日本に知らしめたニューエイジ・ブームである。
ニューエイジというのは、1960年代以降に欧米で花開いた、新たな心身統合への試みといえる。その根本には、心身を病んだ多くのベトナム帰還兵をいかに再統合し社会復帰させるか、という目的があった。そのため、ニューエイジ運動は数多くのヒーリング・テクニックを含むものだったといえる。
これら二つの潮流は、「心身の癒し」という共通のキーワードを持っていた。そこで精神世界、スピリチュアルなどにはそれほど関心がなかった人々にも、「心身の癒し」というメリットにおいて共感を覚え、各種のヒーリング・テクニックが一般の人々にとってもポピュラーなものとなったといえるだろう。
例えば、ヨガや気功を学んだものは、それぞれの呼吸法を活用したヒーリング・テクニックを習得する。水晶他のパワーストーンと呼ばれる鉱石類を学んだものは、それらの鉱石を応用したヒーリング手法を考案する。
またレイキや各種ボディーワーク、またカウンセリング型のヒーリング・テクニックも多種多様に日本に紹介され、多くの場合、これらは指導者育成プログラムを含むものだった。
これらの結果、1990年以降、日本においてはさまざまなメソッドによって心身を癒すヒーリングと、その担い手であるヒーラーが誕生することになった。
まずヒーリングを受ける場合、有償無償を問わず、受け手はそこに「病気治療効果」を期待してはいけない。また、施術側(ヒーラー側)も病気の治癒を確約したりしてはいけない、という大前提があるので、その部分は注意が必要である。
もちろん結果的にヒーリングによって癒しのみならず、治癒につながったという実例は、さまざまなテクニックにおいて実際はある。だが、ヒーリングはあくまで「癒し」であり、「治療」ではないのである。
また、病気治しを暗にちらつかせて大金を摂取するといった詐欺まがいのヒーリング行為には、大いに気をつけなければいけないだろう。さらには、ヒーリング後に「これを持っていれば効果が持続する」と言って不当に高額の何かを買わされるといった霊感商法、もしくは「あなたにはヒーリングが必要です」という言葉で誘い、その後宗教勧誘へ誘導するといった手口などもあるので注意が必要だろう。
一方で、国によっては、ヒーリング・テクニックを医療法へと格上げしたケースもある。
例えば、日本でも最近話題のホメオパシーは、フランスではれっきとした専門医資格が認められ、有資格者には医療行為としての活動が認められている。
もちろんこうした格上げはまだほんのわずかで、その他多くのヒーリング・テクニックは医療行為ではなく、受け手施術者の相互同意の下に行われる「癒しのための行為」である。
しかし現在は医学の分野においても、西洋医学療法のみならず、東洋医学、民間療法、代替医療を積極的に導入する「統合医療」という分野が生まれている。また西洋医師でありながら、自分が学んだヒーリング・テクニックをも治療に実践している医師もいる。
今後、ヒーリングから新たな治療法が生まれていく可能性も十分にあり得るのだろう。
ヒーラーとは、習得したヒーリング・テクニックを施術することで、受け手に「心身の癒し」を与える行為者のこと。ヒーラーを自称するのに、法的な制約は一切ない。
日本においては「病気治し」を目的とした営業行為は、医師等の該当有資格者にしか認めていないため、ヒーラーは病気治しを目的に施術したり、また、病気治癒の確約等を受け手には行ってはいけない。病気治療を行う有資格者の医師とは大きく違うので、さまざまな点で注意が必要である。
ヒーラーが施術に際して使う技法をヒーリング・テクニックと呼ぶ。どんなヒーリング・テクニックを使うかは、ヒーラーによってじつに多種多様である。
中でもポピュラーなものに「エネルギー・ワーク」と呼ばれる手法がある。
これは人体の目には見えないエネルギー部位に対して、ヒーラーが働きかける手法全般を意味する。
例えば気功法は、手を相手にかざす等の方法で、気を送る、気を調整するといったヒーリング・テクニックがある。同様にクリスタル等を使って、相手の身体のエネルギーバランスを調整するといった手法もある。
また次にポピュラーな手法として「カウンセリングスタイル」がある。
これは質疑応答によるカウンセリングを主体にし、そこに誘導瞑想やエネルギー・ワークを加えることなどによって、相手の心身の問題解決の糸口をつかんでいく手法である。
ヒーラーの多くは、上にも挙げたような対面しての施術が中心であるが、中には「遠隔ヒーリング」という手法をとるヒーラーもいる。これは直接会えない相手に、ヒーリングのパワーを飛ばして、ヒーリング効果を与えるというものである。
他の手法としては、自作した絵画・音楽等の創作物を媒介にして、ヒーリングを行うアーティスト・ヒーラーもいる。この場合、その作品を購入することでヒーリング効果を得られるということになる。
さて、こうした様々なヒーリング・テクニックを駆使するのがヒーラーだが、ヒーラーを自称するのにはなんら法的な制約はない。経験年数や臨床実績が問われたりもしない。また、ヒーリング・テクニックの扱いレベルにおいても、じつに様々である。
指導者になるために熟練や認定証を必要とするヒーリング・テクニックもあれば、ほんのわずかの時間でヒーラーを自称できるものもある。また、自分で思いついたヒーリング・テクニックを実践しているというヒーラーも数多くいる。さらに、施術料金等もヒーラー各自が自由に設定している。
つまり、まさに玉石混交なのが、ヒーラーとヒーリングの世界なのである。
それだけに、本物がいる一方で、詐欺師まがいのヒーラーも数多く存在しているので、注意が必要である。ヒーリングを受ける際には、その人物もしくは施術されるヒーリング・テクニックや有償の場合には施術料金等に関して十分に考察し、相互の理解を十分に得てから施術を受けることをオススメする。
ちなみに海外の心霊治療師などもヒーラーと呼称される。フィリピンの場合は、マルコス大統領時代の法改正により、医師ではない心霊治療師(ヒーラー)も、公での治療行為が認められるようになった(諸制約は規定されている)。
ヒーラーになる方法は、まず第一に各種のヒーリング団体が行っている「ヒーラー養成講座」に参加するという方法がある。
この場合、各団体によって必要となる資格・金額等は異なるが、ヒーラー免許取得までの予算としては、数十万~数百万単位が必要となることが多い。
養成講座によるヒーラー資格取得は、料金的なリスクは負うが、メリットとしてはヒーリングテクニックや各種の注意事項を体系的に学べる他、プロとして独立するためのさまざまなノウハウを得られる点にある。
また、そのヒーリング団体が人気のあるヒーリングテクニックであれば、独立後の集客メドもある程度立てやすくなる。
それ以外の方法としては、ヒーラーに弟子入りする、独自のヒーリング手法を考案しヒーラーとしてデビューするという方法もある。
ただし、ヒーリングは口コミ等によって集客されるケースが多いため、「独自のヒーリング手法」の場合、知名度を上げることはやや困難が予想される。
それでももし、そのテクニックが本物であれば、すぐに口コミによって知名度が広がる可能性もある。
●ヒーラーになる前の注意事項
ヒーラーは国家資格ではないため、なろうと思えば比較的簡単になれる。
しかし、ヒーラーという仕事は決して軽んじてはいけないものである。
まず第一に、「自分の心身を危険にさらす」職種である。
ヒーラーになるとは、さまざまな心身の障害等を持った人々たちとエネルギーの交流を行うことが日常茶飯となる、ということを意味する。
つまり、相手のエネルギーや気を受け流すというテクニックがしっかりできていなければ、自身の心身が病んでいくことになる。
自分自身の心身をいつもクリアーな状態にできるような、セルフ・ヒーリングテクニックを身に付けることはとても重要なことである。
第二に、各クライアントはそれぞれに真剣な思いでヒーリングを受けに来るのであるから、ヒーラーも熱心さと真剣さは欠かすことはできない。
その症状が改善するか否か、それなりに責任はのしかかってくるのである。
また、万が一、悪化させてしまった場合は、クレーム等の対象ともなる。
さらに、ヒーラーになるのであれば、「薬事法」「医師法」にもある程度精通しておくべきであろう。
その理由は、集客のための宣伝行為や、実際のヒーリング施術の段階において、「医師ではないヒーラーとしての自分が絶対にやってはいけないこと」を明確に把握しておくためである。