「ラップ音」とは、誰もいないはずの場所から人為的な音が聞こえたり、音源が存在しない空間などから聞こえてくる破裂音、金属音などさまざまな音の総称である。
こうしたラップ音が鳴ることを「ラップ現象」と呼ぶ。
ラップ音、ラップ現象は、「人霊や悪霊など見えざる霊的存在によって起こされる」として心霊・オカルト現象のひとつとされている。
ラップ現象は、物品等が勝手に動いたり、消失や変形、空中を舞ったりする「ポルターガイスト現象」のひとつ、もしくは予兆とする説もある。
しかしラップ現象が起こったからといって、物的作用を伴うポルターガイスト現象が常に起こるわけではない。
また、ラップ現象は起こらなかったが、ポルターガイスト現象が起こるといったケースを、本稿筆者も体験している。
ラップ現象の原因については、霊能者や研究者それぞれが様々な意見を持つが、総合的な見解としては、「ケースバイケースで様々な要因が考えられる」ということになるであろう。
死者の霊、悪霊、生きている人間の念・生霊、その他のエネルギー的存在によるもの、という「霊的な因果を持つ心霊・エネルギー現象」の場合もあれば、木材や水道管その他、下記に述べるような「単なる物質現象」の場合もある、と考えられる。
ラップ音・ラップ現象は、心霊現象の中でもとりわけ「勘違い」の多い現象である。
代表的な勘違いは、木造建築住宅における、木材のきしみ等の「ミシッ」「パキッ」という音を勘違いしてしまうケースである。
水道管が発生させるさまざまなノイズもラップ音と勘違いされる代表格である。
特に新築であるほど、この木材の音は頻度が高いことが指摘されている。
また、天井裏のねずみ等の小動物類の立てる物音を勘違いしたり、ペット類が立てた音を勘違いするケースもある。
超常現象否定派として知られる早稲田大学の大槻教授は、「ラップ音はらちもない雑音」とし、その主な原因を以下のように推察している。
・材質の異なる建材の熱膨張、熱収縮による摩擦音。
・水道管、ガス管に起こる定在波(ゴン、ボン、ブーンなどという音になる)。
・低周波音が建物に当たり振動音を作る(カタカタ、ビンビンなど)。
・大気の断熱圧縮、低気圧で発生するダウンバースト。
・超音速ジェット機の音圧。
●岐阜県富加町「高畑住宅」で起こった集団ラップ音現象
1999年の四月頃から2002年の夏まで、岐阜県富加町にある新築の町営住宅団地「高畑住宅」(24世帯)にて、全世帯がポルターガイスト現象による集団被害を受けた。
この怪奇現象において、全世帯が何かしらの「ラップ音・現象」を体験している。
ただし、新築ということもあり、ラップ現象の一部は、住宅の構造的なものであろうとも推測されている。
●フォックス姉妹とハイズビル事件
「ラップ現象」という言葉の誕生につながったのが、「ハイズビル事件」である。
1847年12月、フォックス一家がニューヨーク州北端の村ハイズビルに引っ越してきた。
しかし一家を迎えたのは「ラップ現象」だった。
ラップ音に悩まされることに業を煮やし、一家は「ラップ現象」と対話することを試みるのである。
そして、同居していた二人の娘マーガレットとケイトがそれに成功する。
ラップ現象は見えざる霊の仕業と想定し、質問をして答えがイエスなら1回、ノーであれば2回のラップ音での返答をもらう、という形でラップ現象を降霊術の通信手段として活用したのである。
このことは全米、欧州に瞬く間に広がり、19世紀におけるスピリチュアリズムや降霊術ブームのきっかけにもなった。
フォックス姉妹は当時、世界で150万ともいわれる信者に崇拝されるカリスマ霊媒師になり、同時に、世界中のアンチ・オカルト派の批判・揶揄の対象にもなった。
こうした風当たりが強まる中で、姉妹は一旦は自分たちが行った各種のインチキ行為を認めるが、晩年、これらを撤回した。
フォックス姉妹の起こした現象の真贋はさておき、紛れもない事実が一つ残った。
それは、フォックス家族が引っ越してきた物件は、それまでも「ラップ現象」が続いており、居住者が次々と引っ越していたという事実である。
●心霊系番組放送中に起こったラップ現象
心霊系番組を放送中にしばしばラップ現象が起こる。
この場合、物音だけでなく、照明が突如消える等の現象も含まれている。
有名なケースでは怪談トークが有名な稲川淳二氏の番組である。
特に何かが起こるといういわく付きの『生き人形』という怪談話をした際に、さまざまなラップ現象が起こっている。
また、人気スピリチュアル番組『オーラの泉』でも、オダギリジョーの出演回、中村橋之助の出演回など、数回に渡り番組収録中にラップ現象が起こっている。
その他、心霊映像などを放送する番組でしばしば放送スタジオ内でラップ現象が起こり、ゲストタレントらがおびえる様子が映し出されるが、これらが本当のものか演出上のものかは定かではないケースが多い。