真霊論-波動

波動

「波動」とは、海や水面などに代表される「波の動き」の総称である。
近年、日本において「波動」と言う言葉は、物理科学のみならず、精神世界やニューエイジ、さらには代替医療などの分野においても多用されるようになった。
これらの分野においては、見えざるエネルギー現象、人の意識・思い、物や空間、などを表現する際に「波動」という言葉で表現することがある。
その代表例をいくつか挙げておこう。
「人の意識や思いは『波動』であり、伝播していく」。
「この場所は良い『波動』が満ちている」。
「良い『波動』には良い結果が引き寄せられ、悪い『波動』には悪い現象が同調する」。「霊的に成長しないと、神界からの『波動』を受けることができない」。
「あなたの『波動』に合った物、『波動』を高める物品を持つようにしましょう」。
などの表現である。
これら精神世界分野における「波動」という言葉の使い方を巡っては、一部の科学者や精神世界否定派からは、「オカルト的語法」、「疑似科学的使用法」などと批判や揶揄の対象となっている。
科学的な波動とは、「振動数、周期、振幅、波長、波数」などの「物理量」を明確にした上で、その周期的変化が空間方向に伝播する現象を指すものである。
ところが精神世界分野においては、物理量を含む科学的根拠が一切不明瞭なままで、漠然と「波動」と表現することに批判は集中しているようである。
特に、一般的に「疑似科学」と呼ばれるものに対して、こうした批判は根強い。
その「疑似科学」の代表格というべきものが、以下に述べる「波動分析器」類である。
なぜ精神世界分野においても「波動」という言葉がある種のブームとなったかというと、1990年代に「波動分析器」、「波動測定器」、「波動治療器」といった機器類がアメリカやドイツから輸入され、当時流行中だったニューエイジ文化や代替医療ブームの一翼を、これらの機器類も含めた「超科学」という分野が担ったことが大きな原動力となったと言える。

波動分析器とラジオニクス

「超科学」とは、科学的視点を取り入れた新たなアプローチであり、主に代替医療分野、健康関係などで多くの試みが行われ、精神世界とも関係性が近いものである。
その代表格として、「波動分析器」などがある。
1990年代、近年『水からの伝言』の著者として知られる江本勝氏が代表の㈱IHMにて、「磁場共鳴分析装置MRA」と呼ばれる波動分析器が発売された。
数百万という価格で個人向け商品ではなかったため、一般には知られなかったが、この機器が可能とするその用途は、当時の代替医療関係者や精神世界関係者にも波紋を広げた。
この機器はまず、物が有する固有波動を情報として分析できる、というものだった。
例えばコップ一杯の水を用意する。
そのコップをこの分析器の上に置く。
するとオペレーターが操作することで、この水がどういう波動情報を持っているか、を分析できるとする。
この場合の波動情報は、まず、機器が抽出した波動は信号に置き換えられてある番号を与えられる。
その番号を付属の対照表で検索することで、番号の意味が得られることになる。
各番号は、人間の感情各種が細かく細分化されたものや、人体臓器の各部位、病名などとリンクされている。
わかりやすく架空の例で示すと以下のようになる。
ある水を分析し、固有信号「A-234」という信号を検出したとしよう。
固有信号とは、その対象物が一番強く発信している信号(=波動情報)とされる。
後はこの「A-234」という信号の意味することを「対照表」で分析する。
するとその結果、例えば、人間の感情では「深い悲しみ」に該当し、さらに「アルツハイマー」という病名とリンクしたり、「アルミ」という金属名とリンクしたりすることがその対照表から分析できるのである。
つまりこの水の波動情報を分析して言える架空の結果はこういう具合になる。
「この水を飲み続けると、悲しみの波動が助長され、脳神経にアルミが集まり、アルツハイマーになる可能性がある」。
もちろんMRAの特長は分析だけではない。
この分析結果を踏まえ、今度はこの水に対して、「A-234」を打ち消す逆波形の波動情報を転写させる、という機能も付いている。
逆波形を転写された水は、今度は一転、「飲めば悲しみを抑え、アルツハイマーを防止する水」が誕生するのである。
江本氏が発表した『水からの伝言』には、水にクラッシック音楽を聞かせるとおだやかな波動を持ち、ヘビーメタルを聞かせると悪い波動を放つ、水にいい言葉を聞かせる、悪い言葉を聞かせるなどでも同様の結果になる、などとある。
こうした分析はすべて、こうした波動分析器を使っての結果に基づいたものである。
このMRAはアメリカ産の機器であるが、一体どうやって「対照表」を作成したのか、また、内部構造はどういう仕組みなのか、などの疑問は発売当時はまったく明かされない極秘事項だった。
しかし現在では、こうした機器の多くが、「ラジオニクス装置」とその研究成果をモデル・応用したものであることが判明している。
●遠隔治療も可能にする「ラジオニクス」
ラジオニクス装置とは、米国の医師アルバート・エイブラムス (1863-1924)によって考案された治療機器である。
その中身は「さまざまな周波数帯の信号が発信できる発信機」と考えていいだろう。
エイブラムスラは、医療現場に従事している中で、こうした信号情報が、生体エネルギーの調整(つまり疾患の改善等)にも好影響を与えることを発見したのである。
エイブラムスは、このラジオニクス装置を使って、遠隔治療にも成功している。
しかし当然ながら、医学界がこうした怪しげな研究・医療実践を許すわけは無く、エイブラムスは「偽医者」として糾弾の対象となった。
このエイブラムスの発見と発明の成果を引き継いだのが、英国の「デラワー研究所」である。
英国人技術者のジョージ・デラワー(1904-1969)はラジオニクス装置を使った実験を進め、さらに世界中の研究者からもデータを集め、膨大な「レート」と呼ばれるデータ集を作成したのである。
この「レート」が、先に述べた機器が抽出する「番号」である。
ラジオニクス工学における「レート」とは、信号であり波動情報である。
逆に言えば、波動であるものであればすべて「レート化」が可能なのである。
つまり、人間のあらゆる感情もレート化ができる。
そして臓器などの物質も、細かく突き詰めれば量子物理が「波動である」と指摘するように、「レート化」できるものになる。
このようにしてすべてを「レート化」して、後は、増幅させたいレート、打ち消したいレートを装置によって電波として送ることで「遠隔治療装置」となるというのがラジオニクス装置なのである。
こうしたラジオニクス装置の研究はドイツも盛んに行った。
現在、ドイツでは歯科医師の多くが、医療補助器具としての波動分析装置を導入している。
これは歯に詰める材料等を、本人に最適なものにする際などに活用される。
また、波動調整をしたダイヤモンド商品を販売することで有名になった日本の「エイトスターダイヤモンド」社でも、EAVというドイツ製の波動分析装置が導入されていた。
こうした波動分析器類の日本への輸入と広がりが、精神世界において「波動」という言葉をよりメジャーなものにしていったのである。

波動と言う言葉の使われ方、霊感商法

精神世界、ニューエイジ、スピリチュアル産業、宗教など、目に見えない世界を表現する上で、「波動」という言葉は少々科学的な響きもあり、重宝されてきたと思う。
もちろん否定派が揶揄するように、科学的根拠のない事象に対して、科学用語としての波動を軽率に使うことは混乱の元ともなるであろう。
特に90年代以降にブームとなった「波動水」においては、「波動転写」等の言葉が巧みに使われ、科学的根拠のまったくないご利益水が多数生まれ、さらに法外な高額化が行われ、中には霊感商法の商材となっていたものもある。
こうした波動という言葉の使い方、および信用性には大いに注意をするべきであろう。
一方で、見えざる世界の探求を進める量子科学も、今後さらに成長していく中で、精神世界的事象をより適切に科学的に解明させる言葉を生み出していく可能性がある。
先だって(2011年9月23日)、「素粒子ニュートリノが光速を越える」という実験結果が発表され、世界中の科学者を驚かせている。
なぜなら、光速を越える存在があれば、時間軸を超越する事象(タイムトラベル、予知等)の実在性・解明・応用に繋がり、同時に、相対性理論という現代科学の基盤の修正を求められるからである。
精神世界と科学の歩み寄りは、まさにこれからが本番なのであろう。

《は~ほ》の心霊知識