真霊論-沖縄ノロ

沖縄ノロ

ノロ(祝女・神女)は、広義においては、沖縄・奄美地方に存在する女性司祭の頂点的存在である。
地域の祭祀を取り仕切ったり、祈りの場である「御嶽」の管理者が主な仕事となる。
狭義においては、琉球王朝の王に仕えた「神官・巫女」である。
この場合のメインともいえる職務は、神と合一し、そのメッセージを王朝に伝える「巫女・巫(かんなぎ)」であった。
巫としてのノロとユタとの違いは明確で、ユタが一般人と接する巫であったのに対し、ノロはその能力を王朝のために提供していた。

ノロとイザイホー

王朝に仕えた巫としてのノロの多くは、沖縄本島のすぐ脇にある「久高島」生まれの女性から選ばれたのである。
その理由は、当時の琉球王朝が「久高島」を聖なる島、聖域として崇拝していたことによる。
従って「久高島生まれ」ということがノロの重要条件だったのである。
そしてノロ選出のための儀式が、12年に一度行われていた「イザイホー」という祭祀であった。
このイザイホーは1978年を最後に、ノロの存在意義と信仰に対する軽薄化、人口の過疎化など、様々な理由によって現在はもう行われていない。
よって、現存する久高島選出のノロが最後の認定されたノロということになる。
ネット上には、「現在、ノロは存在しない」という記述も見受けるが、筆者の知る限り、現在もご高齢ではあるが、1名のノロが久高島に存在しているはずである。
ただ、選出された1978年はすでに琉球王朝もなく、現存のノロが本来の仕事である「ご託宣」(神界からのメッセージを受信すること)に専念したということは無い。
現存するノロと数ヶ月に渡り寝食を共にした人の話しによると、「毎日早朝から、時間さえあれば海岸や御嶽へ出向いて、とにかく世界平和を祈り続けていた」と証言していた。

沖縄とおなり神・ニライカナイ信仰

古来より現代まで、ノロやユタなど多くの巫・シャーマンは女性である。
この背景には「おなり神」信仰が大きく影響していると言えるだろう。
「おなり」とは「兄から見た妹」を意味する言葉である。転じて、妹という存在を兄を守護する「おなり神」として神格化させたのが「おなり神信仰」である。
男性のメインの仕事が海での漁だったため、安全祈願、大漁祈願、を含めて丘で待つ女性たちを神格化させる必要があったわけである。
もちろんそれだけでなく、女性の持つ霊力を古来から琉球地方は尊重してきたという、精神文化的なルーツもある。
その琉球精神文化の礎が「ニライカナイ信仰」である。
ニライカナイとは、琉球各地に伝わる他界概念のひとつで、理想郷であり、神界である。生者の魂もニライカナイより来て、死者の魂はニライカナイに去ると考えられている。
また、大漁・豊穣や、自然のあらゆる生命の源泉であり、ノロたちが時間さえあれば祈りを捧げるのは、このニライカナイに存在する神たちなのである。

《な~の》の心霊知識