センター試験も終わり、いよいよ本格的な受験シーズンを迎えた。
当ブログでは、前回より、スピリチュアル的観点からみた受験対策や合格祈願などについて紹介してきている。
※これまでの記事
・スピリチュアルで受験をのりこえる ~(1)メンタルを充実させて勉強を
今回は、受験まえならば誰もが一度は気にしたことのある「験かつぎ」や「縁起」について考えてみたい。
日本特有のジンクス、「験かつぎ」
験かつぎは、日常的にしばしば誰もにおこなわれている行為である。
たとえばスポーツ選手が、試合に勝ちつづけているあいだはずっと同じ下着を身につけるとか、同じルートで通勤するといったものなどは有名な例であろう。
ビジネスマンであっても、重要な会議やプレゼンのまえには必ずきまったネクタイをするとか、特定の食事をするなどといった行為をする人もいるはずだ。
また、家を出るときはいつも右足からだとか、そうした日常的な部分にも験かつぎを取り入れている人も多いだろう。
この背景にあるのは、かつて良い結果が出たケースとまったく同じことを繰り返すことで、結果も再び同じように良いものになるはずだろうという心理である。
良い流れを断ち切らないようにしようという儀式的な意味もある。
反対に、悪い結果が出たあとは、あえて下着を新しいものに変えたり、通勤ルートを変更したりなどする。ネガティブな結果についても験がかつがれてしまうからである。
悪い流れを断ち切るためには、悪い結果が出たケースと訣別すべく、違う行動をとればよい。
このような「験をかつぐ」という考えかたは、日本特有の伝統的な概念である。
もともとこれは、「縁起をかつぐ」という言葉であった。
これが江戸時代、逆さ言葉が流行していたころに、「えんぎ」が「ぎえん」と言われるようになる。やがて、それが変化して「げん」になったのだろうという説が一般的である。
西洋でいう「ジンクス」の一種だと捉えることも可能であろう。
ただ、験かつぎの場合は、当人以外には意味をなさないものである点が特徴的である。
ジンクスは、その文化圏においては誰もに等しく通用するものである。たとえば「黒猫が横切る」という現象は、世界中の多くの文化圏で、不幸や災厄の前兆だとされている。黒猫を目にすれば、その場にいたすべての人物に等しくその凶兆は影響するのである。
一方、下着の色やネクタイの柄などは、周囲からすればどうでもよいことである。実行する張本人にとってのみ強い意味をもつのが験かつぎなのである。
受験とは切り離せない験かつぎ
こうした験かつぎは、運気や流れといった目に見えないものを引き寄せるためにおこなわれる。
これは、験かつぎをする場面が、当人にとって高い重要度をもっていることの裏返しでもある。なんとしても絶対に良い結果を残した大舞台だからこそ、自分の努力や能力のみではどうにもならない運気や流れといったものすらも味方につける必要が出てくるわけである。
いわずもがな、受験も人生において重要度の高い大舞台だ。誰しも失敗は避けたいところである。
だから受験にまつわる験かつぎも、昔から言い伝えられているものがきわめて多く存在する。
ここでは、掛け言葉のようになっている験かつぎが多い。
有名なところでは、試験前夜や当日の朝などにカツ丼を食べるというものである。これは「カツ」と「勝つ」を掛けたものである。
また、五角形の鉛筆を使って問題を解くとよいというものもある。こちらは、「五角」と「合格」の響きの類似に目をつけたものだ。
反対に、受験生のまえで言ってはいけないとされる言葉もある。
「すべる」、「落ちる」、「転ぶ」といった受験失敗を連想させるような言葉は縁起が悪いと昔からいわれ、避けることが望ましいとされている。
これは、結婚式において「切れる」や「分かれる」といった言葉が禁句とされているのと同じ構図であると考えれば理解しやすいだろう。
験かつぎであるから、これらのことは、受験生本人や受験生を家族にもつ者でなければ、まったくどうでもよい話である。しかし受験にかかわる人々にとっては、気にせずにはいられない繊細な問題となってくる。
古くより根付く言霊思想
こうした験かつぎを、「ただの駄洒落だ」と一笑に付すことはたやすい。
たしかに一見、これらは単なる言葉遊びにも見えるだろう。
しかしながら、こうした験かつぎが発展した文化的背景には、日本に古代より伝わる思想があることを無視してはならない。
その思想とは、いわゆる「言霊思想」である。
言霊思想とは、声に出された言葉には霊的な力が宿るという思想のことである。
言葉は意志である。霊的な力をもった意志は、その言葉の内容を現実のものにしようと精神にはたらきかける。
つまり、ネガティブな言葉は人間からモチベーションを削ぎ、悪いイメージを抱かせることになり、やがては実際に失敗へとつながりかねないのである。
とくに、受験勉強まっただなかの、心身ともに疲れている状態であれば、言霊のもつ強いエネルギーに逆らうことは、なおのことむずかしいだろう。
「すべる」や「落ちる」といった言葉を繰り返し耳にしてしまえば、その悪いイメージが頭から離れず、睡眠中にうなされることさえありうる。
言葉のもつ力を甘くみてはいけない。
だからこそ、ポジティブな言葉の力を最大限に利用したいのである。
ポジティブな言葉をくりかえし語ったり信じたりすることで、自分自身のなかによいイメージを植えつけることができる。そうすれば、おのずと勉強へのモチベーションも上昇するだろう。
また、勉強をしたという経験によって自信をもつことができるため、過度な緊張をすることも防げる。さらに、自信は悪いイメージを内側から追い出すので、健全な精神を保つことにもつながる。
そう、この験かつぎも、実は、前回解説したメンタル面のコントロールと密接に関係してくる話なのである。
それでいながら、言葉遊びのような気軽さがあるため、重荷になることもない。
精神的に過敏になりがちな時期だからこそ、験かつぎを利用してのメンタルコントロールは有効性を増すのである。
馬鹿にできない験かつぎアイテム
毎年受験シーズンになると、さまざまな験かつぎの合格祈願アイテムが発売されるようになる。スーパーマーケットやコンビニエンスストアでも、それ専用のコーナーがつくられることはめずらしくないはずだ。
こうしたアイテムは、なにも神仏の力が宿っているわけでもなければ、スピリチュアルのエネルギーに満ちあふれているわけでもない。
しかしながら、ここまで述べてきたように、験かつぎの背景には言霊思想が根付いている。自分自信の心がまえ次第では、これらも立派な合格祈願のお守りとなりうるのである。
また、ふだんスピリチュアルな事象への関心が薄ければ、パワーストーンやお札などに頼ることは敷居が高いと考える人もいるかもしれない。
そうした人にとっては、こうした験かつぎグッズは言葉遊び的な体裁をとっているために、気軽に手にとりやすいというメリットがある。
ここでは、そうしたグッズのなかでも、最も一般的で誰にでも手に入りやすいものを簡単に紹介してみよう。
認知度も高く、どこでも購入できるものといえば、まずは大手食品メーカーの出すお菓子が挙げられるだろう。
たとえば、ネスレが販売するチョコレート菓子「キットカット」はその語感が「きっと勝つ」に類似していることから、古くから験かつぎとして受験生に好まれてきた。
このひそかなブームを受けて、2008年以降は毎年この時期になると、公式に受験生応援の特別パッケージが出されるようになった。パッケージに書かれた「キット、サクラサク」の文字はモチベーション向上に大きく役立ってくれるだろう。
明治の販売するスナック菓子「カール」も、2001年以降、毎年「ウカール」(受かる)として受験生応援商品が発売されている。パッケージに大きく「合格祈願」と書かれているのが特徴だ。
そしてロッテのチョコレート菓子「TOPPO」も、受験生応援バージョンが存在することでよく知られる商品であろう。この時期になるとTOKYO FMのラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」とのコラボレーション商品として、「TOPPA」(突破)が発売されるのが恒例となっている。
これらのようなスナック菓子は、糖分を取り入れることができるという点でも受験生の味方となるだろう。
言葉遊びでの験かつぎ食品はお菓子ばかりではない。受験生の夜食として大活躍するカップ麺類でも同様の商品がみられる。
東洋水産のカップラーメン「麺づくり」では、「麺づくりで点づくり」として特別なパッケージで売られているし、今後も続々と同様のものが登場するであろう。
冷静に考えれば、こうした食品は、受験シーズンに便乗しただけの安易なビジネスだと断じてしまうこともできる。
それでも、ここにポジティブなメッセージが込められていることに変わりはない。
純粋な合格祈願アイテムとして物足りないことは否めないが、勉強に必要なエネルギーを得られるという実用的な面も考慮すれば、あながち馬鹿にもできないものである。
験かつぎにおいて最も重要なのは、言霊の力を全身で受け入れることなのだ。