年始に、今年も各地で恒例の占い行事が行われた。
「火占い」で今年の稲作を占うー和歌山県
2012年1月1日未明、和歌山県みなべ町西本庄の須賀神社ではたいまつの燃え方で稲の作柄を予想する伝統行事「火占い」が行われた。
これは古来、稲を栽培する時、吉となる品種を神託によって選んでいた歴史が継承されたものと言われている。300年以上前から行われている神事で、現在まで当時の形式を守って残っているものは珍しい。
同神社の除夜祭、歳旦祭終了後、火占いは境内の二の鳥居近くで開催。たいまつは直径5センチ、長さ20センチほどの大きさで、竹と木で作られている。そこに「早生」「中生」「晩生」の札がくくりつけられ、並べられた。
楠本宮司と責任総代の日置博継さん、泰地一郎さんらが3本同時に着火、それぞれ激しく燃え上がった。初詣の参拝客たちは闇の中で幻想的に輝く火に息をのんで見守った。
早く燃え尽きた順に豊作、という占いだが、今年は30分ほどで、中生が最も早く燃え尽きた。続いて晩生、最後は早生。ちなみに昨年も同じだったそうだ。
「かゆ占い」の結果は不作か
和歌山では後日、別の地域でも伝統的な占い行事が行われた。
和歌山県上富田町生馬にある地主神社では2012年1月5日、農作物の出来や景気をかゆで判断する「かゆ占い」があった。これは数百年に渡り継承されてきたといわれる神事だ。
かゆ占いの方法は、まず大鍋に米1升・小豆3合でかゆを作る。そして出来あがったら、「米(品種別に)」「ミカン」あるいは「景気」など占いたい内容が彫られた、長さ約7.5センチの竹筒を鍋に30本ほど入れる。一定時間経過の後、竹筒を取り出して、その中に入ったかゆの量を「上」「中」「下」で計り、占断するというもの。
当日は地元住民ら計約50人が見守る中、しきたりに従って竹筒を鍋に入れ、30分ほど経過した後に総代らが1本ずつ取り出し、包丁で半分に割り判定。
今年はかなり厳しい結果で、「上」はキヌヒカリ、小梅、トマトのたった3種。「中」はダイコン、ハクサイ、サツマイモ、そして景気などの11種で、南高梅や古城梅、ポンカン、早生ミカン、レタス、イチゴその他16種が「下」となった。竹筒の中が空洞だったものも数種あった。
同神社の総代長の芝伍男さん(77)によると、「今年は近年のうち最低の結果ではないか。こんなに(かゆが)入らないのは珍しい」とのこと。何か(占いの手順に)問題があったのか、またはこれが神託なのか、と渋い顔で語った。
富山の御神火占いでは「夢」ある1年が祈られる
他の地域でも、伝統的占い行事を模した祭りが開催されている。
富山県小矢部市の桜町JOMONパークにて、2012年1月9日、「縄文の火占いまつり」が行われた。
これは小矢部市教委と桜町石斧(せきふ)の会が主催する祭りで、御神火(ごじんか)が燃えて倒れた方向で1年の行く末を占うというもの。
当日は、パーク中央には御神火を燃やす竹と薪がやぐらに組まれ、頂上には東日本大震災の被災地復興の願いを込めた「折り鶴」がとり付けられた。周囲に立てられた8本の柱には「夢・絆・健康・希望・勇気・感謝・挑戦・故郷」の札が張られ、御神火を待ち受けている。
そして児童がやぐらへたいまつで点火。御神火は風にあおられ大きく燃えた。およそ15分後に、「夢」の柱へ倒れた。祭祀担当者は「占いは夢。夢輝く年になることを祈ろうぞ」と述べ、参加者全員で万歳を三唱し締めくくった。
いまでも息づく土着の占い・神託、今後も継承を
日本では、年始に占い・神託を司る行事が各地でみられる。神道、いわゆる土着の宗教が今でも生活の中に息づいているというのは、特に先進諸国の中では大変珍しい。欧米諸国ではキリスト教・イスラム教など一神教が布教された折、このような民間信仰は「邪教」として一掃された経緯があるためだ。
せっかく継承されてきた歴史を無にはしたくないものだ。食や生にまつわる、人間の自然な感情や欲をうまく「ハレ」の場で昇華させてきた先人の知恵を尊び、末永く続くことを期待したい。