すっかり正月ムードは明けたが、まだ2012年ははじまったばかりである。
となると、誰しも気になるのが今年一年の運勢だろう。
ふだん占いなどにあまり興味のない者であっても、年のはじめばかりはさまざまな占いの結果を気にかけたりもするものだ。
しかし、毎年毎年同じような占いばかりでは飽きもくるのではないだろうか。
十二星座占いや姓名判断などはたしかに安定感のある占いだが、たまには違う趣向のものもためしてみたくなるのが人間というものだろう。
そこで今日は、ここ最近にわかに再注目をあつめはじめている「Oリングテスト」を紹介したい。
過去にもオカルト的な遊びの一種として何度か流行したことがあるため、ご存知の読者も多いだろう。名前は覚えていなくとも、具体的な内容についての解説を読めば思い出すという人もいるに違いない。
なぜ今再びOリングテストが脚光をあびているのか、その真相に迫りたい。
「Oリング」=「輪っか」
「Oリングテスト」は「オーリングテスト」と読み、特別な道具などを必要としない診断の手法である。親指と人差し指をまるめて「輪っか」をつくり、その形状から占うため、このような名称がついている。
輪っかをつくると、逃げ場のなくなった微弱な電流や磁気などが循環し、その周囲に電場や磁場がつくられることになる。
ここに外部から刺激があたえられると、脳は電場や磁場の微弱な変化を感じ取り、なにかしらの判断をくだしてそれが運動にあらわれる。
このときの脳の反応を読み取るのが、Oリングテストの基本メカニズムである。
具体的なテスト方法としては、この輪っかを、べつの人物のつくった輪っかによって引っ張り、引き離そうとしてもらうのである。
すると指が離れて輪っかが切れる場合もあれば、離れずに保持されるケースもあるだろう。この際、脳や指の筋肉がどのような抵抗をみせたかが診断材料となるのである。
もともとOリングテストは、薬品や食品などが体質に適しているかどうかや、体になんらかの異常があるかどうかなどを調べるものだった。
輪っかをつくる指とは反対側の手に、調べたい薬品や食品などを載せたり持たせたりすることで、その品物の適・不適を判断するのである。体が欲しているものであれば輪っかは切れず、反対に体に害悪なものであれば、指は簡単に離れるという。
また、体に異常がある場合は、悪いと推測される部位の体表を棒などで刺激したままテストを実施する。この場合も、異常がなければ指はそのままで、悪ければ指が離れる。
Oリングテストの歴史と原理
Oリングテストの歴史は案外古くは、大村恵昭博士によって1970年代から研究されてきたものである。
大村博士は電気工学と医学の両分野の専門家であり、これまでにニューヨーク心臓病研究ファウンデーション研究所長やニューヨーク州公認国際鍼・電気治療大学学長、ウクライナ国立医科大学ノン・オーソドックス医学教授、マンハッタン大学電気工学科客員研究教授などを歴任してきた。また日本国内においても、昭和大学医学部の客員教授として教鞭を振るってきたという経歴の持ち主である。
業績としては、1972年にアメリカではじめて鍼麻酔に成功している。それ以来、大村博士は鍼が脳循環や筋肉神経系に対しておよぼす影響について調べてきた。また、特定の波長の光や電場や磁場などによって体の異常を検出できることも発見した。
そうした数々の論理を臨床に応用し、西洋医学の大系にまとめあげて発表されたのが、Oリングテスト(正式名称:Bi-Digital O-Ring Test)だった。1981年のことである。
原理としては、以下のように語られている。
・臓器に異常がある場合は、その周辺が刺激に敏感になる。そのため刺激した状態では筋力がゆるみ、指の抵抗力も低くなる。
・薬物や食品などを手にのせると、その物質が放つ電磁場が手にも影響する。そのため筋力が変化し、適・不適の判断に応じて指の抵抗力も変化する。
・特定の物質が体内にすでにあるとき、同じ物質の電磁場を感じると共鳴現象が起きる。そのため筋力にも変化がおよぶ。
科学的な信憑性には疑問があるが……
しかしこれは、いうまでもなく疑似科学的な診断方法である。
容易に切れたかどうかの判断は、調査者の主観によるところとなるからだ。
テストの際、脳波を科学的に計測するとか、指の筋力を測定したりといったことがあるならば話は異なるが、Oリングテストにおける判定にはそうした機器は一切用いられない。
そうした道具を必要としない手軽さがOリングテストの長所でもあるわけだが、残念ながら、医療およびそれに類する行為に用いるものとしては、科学的根拠および客観性に乏しいといわざるを得ない。
間違っても、薬品の処方をする際にOリングテストで判断されては、その医者を信用する気にはなれないだろう。
ただし、医療のような人命に直結する現場でさえなければ、使いみちによってはこれも有用となりうる。
プラセボ効果に代表されるように、心から信じることで肉体に実際になんらかの効果がもたらされるという例は多い。
占いなどはその代表例だろう。古今東西のさまざまな占いは、いずれも科学的には無根拠なものである。それでもよく当たると評判の占いは存在するし、実際にまじめに取り組めば占いの結果はたしかに信憑性がある。
この、「科学では説明できないがたしかに存在する」ものこそ、スピリチュアルの本質である。
近年再び注目をあつめるようになったのも、こうした側面が期待されてのことだ。
「占い」として再注目をあびるOリングテスト
Oリングテストは、自分自身の体になにが適していてなにが適していないのかを診断するためのものだった。
これを応用して、薬品のみならずあらゆるものの答えを導きだそうというのが、最新のOリングテストだ。
たとえば、毎日のちょっとした行動を決定するときに使用する。どの服を着ていくかとか、どのルートで出勤・通学するかとか、ランチになにを食べるかといったことをOリングに尋ねてもよい。
人生とは日々の積み重ねである。こうした些細な判断も怠らないことで、より充実した生活をおくることができるだろう。また単純に、日々の生活に遊び心がうまれるというだけでも必ずや毎日が楽しくなるはずだ。
人生を左右するほどの選択をゆだねるのもよいだろう。人生の岐路というものは、えてして思いがけず突然やってくるものである。だが時間は待ってくれない。いつでも熟考する猶予があたえられているとはかぎらないのだ。
こういったとき、Oリングの導きに身を任せるのである。
とくに、恋愛の相性診断としてのOリングテストの人気は俄然高まっている。
このとき手にのせたり持ったりするものは、なにも診断したい相手でなくても構わない。相手からもらったり借りたりしたものでもよいし、直筆のメモなどでもよい。
この状態でOリングテストを実施すれば、その人との恋愛が自分にとって有益なものなのか、それとも悪影響しかもたらなさないものなのかが判断できるはずだ。
「自分」は嘘をつかない
しかし、どうして今Oリングテストなのだろうか。
手軽さや簡単さはたしかに魅力だが、さまざまな情報の発達した現在、それはほかの占いでも同様だ。タロットやカバラといった占いさえ、ウェブサイトやスマートフォンのアプリなどで非常にインスタントにできるようになっている。なにもこれはOリングテストだけの特別なメリットではない。
Oリングテストがそれらと一線を画しているのは、その答えがすべて、自分の内なる心理によって導き出されているということである。
これこそが、2012年の今、Oリングテストが注目をあつめている本当の理由といえるだろう。
00年代半ば、日本全国で空前のスピリチュアル・ブームが巻き起こったことは記憶に新しい。
このブームのさなか、非常に多くの占い師やカウンセラーが有名になっていった。このおかげで救われた人もいるはずだ。
だが、一方で、ブームに便乗しただけの詐欺師まがいの者たちも多く現れてしまった。彼らは、相談者たちの不安な心理やスピリチュアルの雰囲気を利用して、自分の利益を誘導するためだけに占いやカウンセリングをしてきたのである。
こうした悪徳商法を用いる占い師・カウンセラーの登場によって、われわれは当然の事実をあらためて思い出したはずだ。
どれだけ人気で評判の占い師も、あくまでも「他人」なのだと。
自分のことをいちばん理解しているのは、ほかならぬ自分自身である。また、自分の判断だからこそ、人は自分の行動に責任をもてるものでもある。
Oリングテストは、すべて自分の脳がおこなっている。そこでくだされた判断は、心の底で自分が本当に望んでいるものなのである。
いわばOリングテストは、自分を見つめ直す占いだといえよう。
1000年に1度の大震災もあり、不安定な現在だからこそ、自分へ還ることが求められているのである。