真霊論-引いて終わりではない正しいおみくじの活用法

引いて終わりではない正しいおみくじの活用法

新しい年が明けた。三が日も過ぎ去り、すでに初詣を終えている読者がほとんどだろうと思われる。参詣先の神社や寺院でおみくじを引いた人も多いだろう。
だが、引いて結果を見て、それだけで終わりにしてしまってはいないだろうか?
正月は、心身ともに、リセットしリスタートするチャンスである。
一年の区切り目や新年という概念は、たしかに人間が勝手にきめたものであって、12月31日と1月1日とで世界が劇的に変わるわけではない。しかしながら、われわれは無意識に節目を求める生きものである。そして、節目によって心を入れ替えることができる。人間は環境によって変わる生きものだからだ。
昨年が良い年だった人にも悪い年だった人にも、平等に新年はおとずれている。
今年こそはと新しいことに挑戦したり、長年の夢を現実に変えるべく努力をはじめるには、まさしく今が絶好のタイミングだといえよう。
そうした新たな一年の行方をうらなうのに最適なのが、おみくじである。
せっかく引いたおみくじだ。ただ結果に一喜一憂するのではなく、それを有効活用し、最大限自分自身のために生かしたいものである。
今回はおみくじの意義についてあらためて知っていこう。
おみくじには神仏の意志が込められている
おみくじとはそもそも、どういう意味なのだろうか。
漢字では「御神籤」(神社の場合)や「御仏籤」(寺院の場合)と表記されることが多いが、これは当て字である。
実はおみくじの「お」と「み」は、両方とも尊敬の接頭辞「御」に由来しているのだ。つまり、「くじ」に二重に尊敬の念を込めて呼んだものが「御御籤=おみくじ」なのだといえる。
現在よく親しまれているようなスタイルのおみくじが確立されたのは、10世紀の比叡山延暦寺においてだったといわれるが、神仏の意志をうかがう神事・仏事としてのおみくじははるか古代より存在した。
たとえば、そのコミュニティにおける代表者の後継者をきめる際や、政治や景気の行方をうらなう場合などに、おみくじを引いたのである。こうして古来より日本人は、神仏の導きに身を委ねてきたのだ。
現在のおみくじも、スタイルや目的こそ大きく違えど、根本的な部分では違いはさほどない。神や仏に自分自身の行く末をうらなってもらい、向かうべき方向性のうかがいを立てているわけである。
それなのに、ただ「引いておしまい」ではあまりにもったいないといわざるを得ない。
大事なのは「なにを引いたか」より「どのように過ごすか」
いまいちど認識しておくべきなのは、おみくじは運勢をうらなうものではあるが、ギャンブルではないということだ。
「大吉」や「凶」といった一目みてわかりやすい結果が出てくるため、どうしてもそのゲーム的な部分に注目があつまってしまう傾向が昨今目立つ。「大吉」を引けば誰もが喜ぶし、「凶」を引けば落胆しない者はいないだろう。
しかし本当に重要なのは、「大吉」や「凶」といった額面よりも、その下に書かれているはずの、詳細な解説の部分なのである。
なぜなら、神社・仏閣によって額面の分類方法は異なっているからだ。
一般的には「大吉・吉・中吉・末吉・凶」といった5段階程度のケースが大半であるが、なかには「小吉」や「半吉」が共存している場合もある。また、「大凶」や「大大凶」といったさらに悪い運勢が含まれるところもある(ちなみに、縁起のよい順番は、「大吉>中吉>小吉>吉>半吉>末吉>末小吉>凶>小凶>半凶>末凶>大凶」であるとされる)。そして、それぞれの割合も神社・仏閣によって異なっている。
5段階での「吉」と12段階での「吉」では、当然ながらそのニュアンスは変わってくるであろうし、「凶」の割合が低いケースと高いケースとではその深刻さの度合も違ってくる。
あくまでも額面は目安であって、詳細をよく読み解きもせずに一喜一憂すべきではないことを忘れないようにしたい。
詳細部分には、漢詩や和歌によって運勢が象徴的にあらわされていたり、個別の運勢についての説明があったりなどするはずだ。
これこそが、神仏が本当に伝えてくれようとしている今後の見通しなのである。その証拠に、外国人観光客も多くあつまるような著名な神社・仏閣のおみくじでは、運勢の詳細こそが重点的に翻訳、併記されている。
これをしっかりと理解し、よりよい日々を過ごすための指針とすることこそが、おみくじの正しい活用法だといえる。
「大吉」が出たからといって、それをよいことに怠惰に暮らしていたら、運気は逃げていく場合もある。「凶」が出たとしても、それに悲観することなく吉へと転じるための努力をつづけていれば、必ずや運気は上向くだろう。
おみくじを紙くずにするのも道しるべにするのも、自分自身の心がけ次第なのだということを強く胸に刻んでおきたい。
引くべきときにはまた引けばよい
日々の心がけによって運のめぐりは変わる。それが実感できたときは、またおみくじを引くとよいだろう。
よく勘違いされがちだが、なにも、おみくじは一度しか引いてはいけないというものではない。もちろん、遊び半分で引けば何度引こうともすべて紙切れでしかないが、しっかりと意味のあるタイミングで引き直すならば、それは間違いなくその時点での進むべき道を示してくれているはずだ。
そこでよい結果に転じていたならば、日々のおこないを継続すればよい。まだ悪い結果のままであったならば、努力が足りないのだからよりいっそう精進すべきだということである。
2012年がどのような年になるかは、今後のあなた次第なのである。
よい一年になることを祈りたい。