よい暮らしはよい睡眠とともにある。
前回の記事では、いかに睡眠と生活が密接な関係にあるかを解説したうで、「よい睡眠」と「悪い睡眠」の違いについて考えてみた。
そのなかで、睡眠という行為がなにより効果的なスピリチュアル・ヒーリングであることを、あらためて確認してもらえたのではないだろうか。
今回はそれを受け、睡眠をより意義深く充実したものにするためのアイディアを紹介していきたい。
さらなる価値をもたせることで、睡眠をただの休息や癒しにとどまらず、クリエイティブな行為にまで昇華させることができるかもしれない。どうせ眠らなければならないのだから、睡眠時間を有効活用しよう。
われわれは人生の3分の1以上の時間を睡眠に充てている。この時間の過ごしかたをより豊かなものにできたなら、おのずと人生も豊かになるはずだ。
睡眠のクオリティは人生のクオリティに等しいのである。
眠りの有効活用 記憶の整理と睡眠学習
睡眠に記憶を整理する効能があることは前回説明したとおりだ。
起きているあいだ、脳は五感からインプットされたさまざまな情報を蓄積している。そのなかには、絶対に忘れてはならない大事な情報から、覚えていてもなんの役にも立たないような「記憶のゴミ」まである。
そうした玉石混淆の情報が、雑然と箱に放り込まれたような状態になっているのである。
一説によれば、人生のすべての記憶は脳のどこかにずっと保存されているのだともいう。
それだけの莫大な情報のなかから、必要なものだけを必要に応じて取り出すためには、整理整頓が必須だ。洋服ダンスやパソコンのファイルと同じことである。整理が下手だと、大事なものが奥に埋もれてしまって、いざというときに取り出せなくなる。
睡眠は、記憶整理のエキスパートであるわけだ。情報の取捨選択を図り、必要な情報のみを記憶として保存する。そして不要なゴミは、奥のほうへと押し込める。
約7時間のあいだに、人間の脳はこれだけの大掃除をおこなってくれているのである。
それならば、はじめからこの大掃除の途中に情報をインプットしてみたらどうだろうか。
このとき情報は、遠回りすることなく最初から然るべき位置に収納されるであろう。つまり、記憶の固着がよりスムーズになるということでもある。
英会話などに代表される睡眠学習法に効果があるとされるのは、このためだ。
人生は有限である。そして、仕事や付き合いなどで奪われる時間も多い。自分のための時間を少しでも長く確保したいと考えることは不自然な欲求ではないだろう。そしてこれを実現するためには、睡眠時間を利用することが最もシンプルな方法だ。
眠っているだけの時間を、なにか生産的なことに利用できないものかと考えたことのある人は少なくないだろう。
では、いわゆる睡眠学習法には本当に効果があるのだろうか。
これは、イエスともノーとも言い切れないところである。
睡眠中の外的刺激が実際に脳に影響をあたえることはたしかである。
たとえば、眠っているあいだに英会話のCDを流していると、夢のなかでの会話が英語になったりするということがある。また、睡眠中に聞こえたサイレンの音が夢のなかでも現れるということも多い。
しかし、そうした刺激が必要な情報として分類されるかどうかはまた別の問題だ。
たとえ記憶していたとしても、それが不要な情報と分類されてしまっては、呼び起こすことがむずかしくなる。
つまり、「覚える」という点に関してのみいえば睡眠学習法の効果はイエスだが、実際にそこで覚えた知識を活用できるかという点を鑑みると、これは判断に困ってしまうのだ。
眠りにつくまえに自己暗示を
学習において大事になってくるのは、いかにそれが重要な情報であるか、いかにそれを覚えようとしているのかを、自分に言い聞かすことなのだといえる。
そう、自己暗示にかけるのだ。
「自己暗示」という言葉をみると、途端にオカルトの臭いがしてどうしても胡散臭いと感じてしまう人もいるかもしれない。
しかしながら、自分の思う「そうありたい自分」になろうとするという意味では、スピリチュアルの基本理念となんら相違するものではない。
また、人間には本来、なりたい状態になろうとする超自然的なエネルギーがある。その、もともと持っているはずの能力を引き出すという意味でも、やはりスピリチュアル的な考えかたと根は同じなのである。
ここまで理解すれば、睡眠学習法の是非の論点が、その学習法そのものにはないことに気づくだろう。
重要なのは、自己暗示をかけるという行為のほうなのである。
そして、この場合、睡眠と関連づけて自己暗示がおこなわれることがポイントだといえる。
起きているあいだの自己暗示としては、毎日目に入る場所に目標を書いておくというものが有名だろう。また、鏡に向かって毎日必ず目標を唱えるというものもある。
これらが一定の効果をもっていることは、スピリチュアルへの造詣が深い人ならばもはや常識である。
ただし、これらは意識的におこなう自己暗示である。そのため、理性的で頭の回転の速い人ほど、なかなか自分をだますことができないという欠陥もあった。
それに対して、睡眠時の自己暗示は、意識と無意識の中間の部分でなされる。よって、理性的な人であっても、素直に暗示にかけられやすいのである。
もちろん、睡眠のさなかに意識的に暗示をかけることはむずかしい。
「睡眠時」と書いているが、実際には、ベッドに入ってから眠りに落ちるまでのまどろみの時間が、自己暗示のゴールデンタイムなのである。
眠りに入る直前は、人間の心身が最もリラックスした状態だといえる。誰しも眠るときは力のぬけた状態になっており、心身のあるがままの欲求に正直になっているからだ。
多くのヒーリングや占いなどがそうであるように、スピリチュアルな行為はこのリラックスした状態でこそ最も効果を発揮するのである。
自己暗示は自己実現へ向けたイメージトレーニング
ここまで、自己暗示が学習に有用だということを述べてきた。
ただ誤解してもらいたくないのは、なにもこの「学習」が、学校の勉強やキャリア・アップのための資格取得にはかぎらないということだ。
自己暗示した内容を、睡眠という整理法によって脳に覚え込ませることもまた、ひとつの学習なのである。
つまり、夢や目標を達成できると強く暗示することで、自分の心身に「達成できる」のだということを事実として覚えさせるわけである。
暗示が成功すれば、必ずや自分自身の内なる能力が、その達成に大きな力を貸してくれるはずである。
だからこれは、具体的な目標であればあるほどよい。ダイエットをしたいのであれば「~キログラム痩せる」、資格を取得したいのであれば「試験で~点以上とる」と、具体的な数値を含めて目標を立てるするべきだ。
睡眠時の自己暗示はいわば、イメージトレーニングなのである。
自己暗示をマスターするということは、自己実現に直結するだろう。
価値ある睡眠とはこういうことをいうのだ。
次回は、睡眠時に自己暗示をするための具体的な方法を紹介していきたい。